税制はこう改革すべき 特別寄稿・視点 立正大学税制研究所特別研究員・税理士 浦野広明〈1月30日号より〉

 岸田政権は22年度与党税制大綱を決定した(21年12月10日)。「成長と分配の好循環」「新しい資本主義の実現」というが、中身は大企業・富裕層をさらに優遇するだけで、国民を置き去りにしている。

 大綱は「賃上げ減税」だと強調する。賃上げをすると、法人税から賃上げ税額控除をもっと増やすというのだ。

 法人税は法人の所得に課すものである。19年度の法人数274万5437社のうち61・6%の169万1357社は欠損法人である(国税庁「会社標本調査」)。欠損法人の大部分は苦しい営業を強いられている中小企業で法人税の負担義務が生じない。つまり、61・6%の会社は、賃上げ減税は関係ないし、個人事業者も関係ない。賃上げ減税は、多額の法人税を支払う大企業向けの不公平税制である。

 第2次大戦後の日本税法は、直接税(国税においては法人税、所得税)を中心とする体系が曲がりなりにも、消費税導入まで40年近く続いた。法人税率は、84年当時43・3%であった。年々引き下げられ現在は23・2%と激減している(資本金1億超)。しかも法人税は単一税率である。

 単一税率は、所得の大小に関係なく一律の税率が適用される不公平税制である。単一税率に加え巨大企業は、数多くの企業優遇制度(連結納税制度、外国税額控除など)によって、実際の税負担は大幅に下回っている。

 だから法人の利益蓄積である「内部留保」(金融・保険業を除く)は20年度末で484兆3648億円、9年連続で過去最高を更新している(財務省「法人企業統計」21年9月1日)。賃上げ減税なんてとんでもない。大企業の内部留保を賃上げ、下請け単価の増額、独占物価を引き下げるように求めることが「成長と分配の好循環」であろう。

 第2次安倍晋三政権以来、大企業減税が繰り返され、富裕層の優遇税制も温存された。その一方で低所得者ほど負担が重い消費税は二度も増税された。コロナ禍から暮らしと中小企業の営業を守るために消費税率は直ちに5%に引き下げるべきである。

 消費税に依存した税制ではコロナ対策の財源確保も社会保障の拡充もできない。大企業・富裕層に応分の負担を求める総合累進所得課税による税制改革に踏み出すことが急務である。

 表は総合累進所得課税による税収の試算である。

 新自由主義(岸田首相は「新しい資本主義」という)は、競争市場の勝利者が多くの富を蓄積し、敗北者が貧しいのは当たり前だとする考えだ。経済の論理を制約するのが社会権(生存権)である。社会権は、個人が社会の中で生存し、人間らしい生活を維持、発展させるために、自由な社会に特有な弱肉強食の弊害を除去することを国家に対して求める権利である。総合累進所得課税は社会権の保障に他ならない。


(東京民報2022年1月30日号より)

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