岸田首相が17日、就任後初の施政方針演説を行いました▼経済運営をめぐって「新しい資本主義」を打ち出す岸田首相。「新自由主義」が格差と貧困を拡大させたことや健全な民主主義の危機を生んだことなどに「世界で危機感が高まっている」とは述べたものの、この日本でどんな問題が生まれているのかは語っていません▼景気変動による国民生活などへの極端な影響を緩和して経済の動きを安定化させる財政や社会保障などの仕組みを、経済の「ビルトインスタビライザー」(自動安定化装置)と呼びます。新自由主義の問題点に早くから警鐘を鳴らしていた、経済評論家の内橋克人さん(21年没)は、労働運動や社会的な運動を通じて形成された安定化装置が、新自由主義の「過剰な市場主義」や「小さな政府」論で崩される危険性を訴え続けていました▼岸田首相の施政方針は、「さまざまな弊害を是正する仕組みを資本主義に盛り込む」と他人事のように述べるのみでした。新自由主義の是正に本気で取り組むなら、様々な警告を無視して、安定化のための仕組みを壊してきた自公政権の政策の反省から始めるべきでしょう。そのことは、賃金が上がらず国民生活が安定しない「弱くもろい経済」の解消にもつながる道です。
〈東京民報2022年1月23日号より〉