【書評】胸に響く異色対談 山中伸弥・藤井聡太共著『挑戦 常識のブレーキをはずせ』

 本書はノーベル賞受賞科学者・山中伸弥さんと史上最年少で五冠を達成した棋士・藤井聡太さんの異色対談である。藤井さんは今や、日本中の話題をさらっている時の人。山中さんは4年前に、永世七冠の羽生善治さんと対談しており、いわば将棋の“事前学習も万全”。この対談が面白くないわけがないではないか、と思わされる。

 二人は40歳違いで初めての出会いは藤井さんが16歳の時。その後のめざましい活躍ぶりに、当初は君付けだった呼び方も、「いつの間にか『藤井さん』になっていました」と山中さん。

 藤井さんの質問などにかみ合わせ、山中さんは異分野の知識が大成功につながった体験や、発想力と経験値のピークは何歳かなど、自身の話を織り交ぜて対話を進めていく。藤井さんの勝負に対する心得や負けた時の対応などを聞き出す。そのなかから内に秘めた将棋への情熱や努力、圧倒的な強さの秘訣が浮き彫りになっていく。それが実に楽しそうに進展する。

講談社 1400円

 「指し手だとどのくらい先を読むんですか」と問われた藤井さんは「場合によっては三十手以上」と。「頭の中でどんなふうに駒が動いているのか。いや、藤井さんの脳を見たいなぁ。どんな脳か」と山中さん。

 「ははは(笑)。いや、頭の中では盤上で駒を動かしているわけではありません」(藤井さん)。さらに山中さんは、アインシュタインの脳が一般人より大きく、しわの数も多く、脳から見ても天才だったと紹介。「藤井さんもそうなんじゃないですか」と笑わせる。

 現在、棋士はAI(人工知能)に勝てない。藤井さんは、AIを研究に使って将棋界全体が強くなっているし、どんどん強くなっていくだろうと展望する。そして自身は、「強くならなければ見えない景色は確実にあると思うので、そうした景色を見るところまで行きたい」と、棋士としての覚悟を語っている。胸に響く言葉も多く、将棋フアンでなくとも楽しめる。(松橋隆司・ライター)

(東京民報2022年2月20日号より)

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