本書はノーベル賞受賞科学者・山中伸弥さんと史上最年少で五冠を達成した棋士・藤井聡太さんの異色対談である。藤井さんは今や、日本中の話題をさらっている時の人。山中さんは4年前に、永世七冠の羽生善治さんと対談しており、いわば将棋の“事前学習も万全”。この対談が面白くないわけがないではないか、と思わされる。
二人は40歳違いで初めての出会いは藤井さんが16歳の時。その後のめざましい活躍ぶりに、当初は君付けだった呼び方も、「いつの間にか『藤井さん』になっていました」と山中さん。
藤井さんの質問などにかみ合わせ、山中さんは異分野の知識が大成功につながった体験や、発想力と経験値のピークは何歳かなど、自身の話を織り交ぜて対話を進めていく。藤井さんの勝負に対する心得や負けた時の対応などを聞き出す。そのなかから内に秘めた将棋への情熱や努力、圧倒的な強さの秘訣が浮き彫りになっていく。それが実に楽しそうに進展する。