【コラム砂時計】戦後77年、夏の「宿題」〈8月7、14日号より〉

 

昨年1月に亡くなった半藤一利さんは今の墨田区に当たる向島で生まれた。1945年3月9日の真夜中から10日未明にかけて、米爆撃機による無差別が下町を襲った。少年は、火の粉を払いながら逃げ惑い、疎開先の茨城県下妻では、米戦闘機の機銃掃射で危うく命を落とすところだった。その半藤さんが私たちに残した数々の言葉がある。

 「昭和」から何を学ぶべきか─というなかで、戦後の日本は、「戦争をして人を殺したこともないし、戦争によって死んだこともない、そういう民族はおそらく日本人だけ」として、その民族がいまこそ「戦争はよくないですよ」と発言すべきだ、と述べている。(「日本人の宿題 歴史探偵、平和を謳う」NHK出版新書、以下同書より)

 「歴史探偵」を自認する半藤さんはこうも言っている。「(兵器も)強力になっています。……遠くからボカボカ撃って、自分の方は何の被害もない」ということはあり得る、それが「人類が直面している最大の危機だと思います」。ロシアのウクライナ侵攻をまるで予期していたかのようだ。これを語ったのが、2005年1月1日、17年も前、NHKの「ラジオ深夜便」だから、先を見抜く力には敬服させられる。

 このインタビューで印象深いのは、半藤さんが語るこれからの日本のあるべき形である。「日本が世界のトップを切って、……平和で行こうじゃねえか、ということを国家目標として打ち立てて、バカにされようが、何しようが、二十一世紀の日本の生き方にしよう」と呼びかけている。

 今の日本の姿は、これとは正反対に向かって突き進んでいる。国葬もその一環なら、防衛費増額、核抑止力もまたしかり。与えられた「日本人の宿題」は、私たち自身の力で解かなければならない。

(阿部芳郎・ジャーナリスト)

(東京民報2022年8月7,14日号より)

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