東京から全国へ食べられる花を エディブルフラワー生産者 立川市 網野信一さん
- 2023/4/19
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日本ではこれまで食用菊や桜の花などを利用した季節を感じさせる和食の文化が根付いています。桜の花の塩漬けを用いた桜湯などを思い浮かべる方も多いことでしょう。近年ではサラダやケーキに彩りを添える食用花の種類も多く見られるようになり、エディブルフラワーと呼ばれ注目を集めています。ホテルや飲食店、洋菓子店などで色とりどりの花を見かける機会も増えています。東京で唯一のエディブルフラワー生産者のあみちゃんファーム代表取締役の網野信一さん(37)を訪ねました。
立川駅からバスで10分、住宅が広がる中に50アールの農地を有するあみちゃんファームで、エディブルフラワーは見事に咲き誇っていました。今の時期はキンギョソウ、ストック、ベゴニア、ナスタチウム、なでしこが盛りだと言います。その横には母の日に向けてエディブル用のカーネーションも花を咲かせるようにスタンバイ中です。エディブルフラワーと観賞用の花の違いは農薬とのこと。「植物に毒性がないのは当然ですが、残留農薬がないこと、安心・安全が一番です。季節の花を自然に近い形で育てています。花はビタミンやミネラルが豊富なんですよ」と網野さん。
あみちゃんファームからは年間約20種類の花が北は青森から南は九州まで、イタリアンやフレンチのレストラン、ホテルなどに、クール便で送られていきます。網野さんは、ひと花ずつ丁寧に摘み取り、ピンセットでおしべを取り除いて刷毛で花粉と汚れを落として1日あたり50パックほどパッキングします。
出荷準備は午前中の3時間で、「夏は摘んだらさっと洗って冷蔵庫に保管してパッキングします。シャキッとさせて水分を含ませておきます」。季節ごとにも気を使うと語ります。「冬が盛りのビオラは乾燥が大敵です。ビニールハウスで15~20℃に管理しています」と、デリケートな花を季節ごとに美しい形で送り出す工夫は自身で試行錯誤して身に付けたものです。
地産地消の取り組みも
祖父、父と続く農家で育った網野さんは高校卒業後、就農するつもりだったと振り返ります。「父に外で働く経験が大切」と言われ、清涼飲料水の自動販売機補充員を経験。東京都の農業試験場での勤務と農業の兼業を経て、専業農家になりました。試験場での勤務時にエディブルフラワーの存在を知り、それが栽培に至るきっかけになりました。