【コラム砂時計】供託金は憲法違反

 

 

日本の選挙制度には多々問題があるが、法外に高い供託金もその一つである。国会議員に立候補するには、衆参両院ともに比例区600万円、選挙区300万円を供託しなければならない。

 民間給与実態調査による国民の平均年収(2021年、443万円・国税庁)を上回るような大金を用意することが前提条件では、政治参加を入り口でシャットアウトされたも同然だ。諸外国ではアメリカ、ドイツ、フランスに同種の制度はなく、イギリスで日本の町村議選(15万円)の半額である。

 この制度、ルーツをたどると、1925年当時にさかのぼる。大正デモクラシーの波が広がり、普通選挙法が制定され、満25歳以上の男子に選挙権が与えられ、有権者の数が328万人から1240万人に大幅に増えた。ただ、それと引き換えに治安維持法が制定され、共産党は非合法とされる。最初の選挙供託金もこれらの立法とワンセットで導入されたもので、無産政党の議会への進出を抑えることを意図していた。当時の金額で2千円というから、現代の比例区の供託金にほぼ匹敵する。

 そのような「遺伝子」を受け継いだ供託金制度だが、裁判所(2019年5月24日、東京地裁)は、「売名行為や選挙妨害の目的で多数立候補すると、国民の意思が選挙に反映されなくなる恐れがある」などとして、具体例を示さないまま、「供託金は基本的人権を侵害し、憲法違反」とする訴えを退けた。

 憲法15条1項は、被選挙権について明記していないものの、「選挙権と表裏の関係」にあり、基本的人権の一つとみなすべきで、日本弁護士連合会は昨年11月16日、「供託金の大幅減額と制度廃止を含む抜本的見直し」を求める意見書をまとめ、政府に提出している。

 3割の得票で7割の議席を占める小選挙区・比例代表併用制、思想信条の自由に反する政党助成法など、国民の政治参加を妨げる法律が政治不信を増大させる原因ともなっている。こんな法律こそ「束ね法案」として全面的に見直されるべきだろう。

(阿部芳郎・ジャーナリスト)

(東京民報2023年6月11日号より)

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