2013年度から2015年4月まで3回に渡り行われた〝生活保護基準の引き下げ〟は、「憲法25条の定める生存権保障に反する」として無効あるいは、国家賠償を求めて争う新生存権裁判の第16回口頭弁論が7月21日、東京地裁で行われました。
弁論では被告の国側がスライドを用いて、主張を展開。それを受けて原告側もスライドを使い国側の主張の変化や矛盾点を明らかにしました。
原告らは弁論後、国会内で報告集会を開催。訴訟弁護団の田所良平弁護士は今回の弁論について報告し、主な争点について、国が引き下げの根拠とする①体系および級地(地域)の歪み調整を反映②2008年の見直し以降のデフレ傾向-の2点だと強調しました。
デフレ調整(マイナス4.78%)の違法性については、国の「前回の見直しである2008年以降基準額は見直されていないが、その間デフレが続いている。実質的な購買力を維持しつつ、客観的な経済指標である物価を勘案して基準額の改定を行う」とした当時の主張を、「物価は参考資料にとどめるべき(中央社会福祉審議会)とされ、物価変動のみを考慮した基準改定は過去一度も行われていない」と告発。
続いて「国は当初、デフレは2008年から生じたため起点としたと主張していた。その後、前回見直し以降の物価動向を勘案するため起点を2008年にしたと主張が変わっている」など、国の主張の変化と矛盾を指摘しました。併せて物価下落の内マイナス3.28%はテレビやパソコンなどの価格低下によるもので、生活保護世帯の消費構造と大きく乖離かいりしていると述べました。
その上で、「生活保護基準が違法に引き下げられたために、制度からはじき出されて生活に困っている国民が多数生じている」と強調。「生活保護基準は他の福祉制度の適用基準として用いられているために、他の支援制度からもはじき出されている国民が多数生じている」と格差と貧困の要因となっていると語りました。
報告集会には日本共産党の宮本徹衆院議員も駆けつけて「生活保護行政の矛盾を正すためにも国会内でも引き続き取り組む」と原告・支援者らを激励しました。
同裁判を支援する東京連絡会は弁論を前にして地裁前でアピール行動を展開。40人余りが参加しました。これまでに「公正な判決を求める署名」を東京地裁に3万人分提出。同様の裁判では東京地裁のはっさく裁判を始め、全国11地裁で原告勝訴の判決が出されています。次回弁論は10月16日午後1時30分から。連絡会は傍聴支援を呼びかけています。
東京民報2023年8月6日号より