共同親権ちょっと待って 弁護士の会が記者会見〈2023年9月3日号〉

 離婚した後、両親が共に親権を持つという「共同親権」の導入をめぐり、法務相の諮問機関である法制審議会の部会での議論が前のめりで進められています。法務省が早々に部会に対して法案イメージを示そうとする中、共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会(弁護士の会)は8月21日、同省に「導入を前提とした議論をすすめないよう」申し入れを実施。310人超の弁護士が賛同しているとして記者会見を行いました。

会見に臨む呼びかけ人の弁護士ら=8月21日、千代田区

 この日、弁護士の会は①両親が共同親権に合意してもDVや虐待などのケースが紛れ込む危険②父母が不同意で、家庭裁判所が定めたケースで子を危険にさらすリスクが高まる③議論の前に8000件ほど寄せられたパブリックコメント(意見募集)を公開し、議論の参考にすべき④別居親との面会交流が裁判所の命令で行われるようになってからDVや虐待が増加していることの検証-などをすべきと強調。

 呼びかけ人の斉藤秀樹弁護士は「とても意見がまとまるような状況でもなく、重要なことが何一つ専門家の中で真剣に議論されているように思えない。親権のあり方や、DV・ 虐待をどのように排除するのかについて議論がほとんどされず、非常に危惧している」と述べました。

 また、「意見が違うから離婚に至るのに、離婚した途端(子の養育に関して)合意形成ができるのでしょうか」と問いかけたのは角田由紀子弁護士。「日本の離婚は協議離婚(当事者の話し合い)が9割を占める中、社会的な力関係は男性が優位であり、当事者間で平等な話し合いは成立しにくい。そのため、(養育費など)権利を放棄してでも離婚したいと離婚した人も少なくない。法律論以前、常識からしておかしい」と述べました。

 さらに共同親権が導入されている外国では「実施してみたけれど実態が伴わない」として見直しが進む中、「あらゆる面で『合意』が非常に軽く扱われがちな日本では、一番迷惑を受けるのは子どもではないか」と問いかけました。

共同=対等は現実と異なる

 太田啓子弁護士は「共同イコール対等ではない」と切り出し、「子どもに会えないと聞くとかわいそうと思われがちだが、面会交流と親権は違う。面会交流の申し立てをすべき」と述べました。さらに共同親権が実施されると、「どこに住むのか、医療を受ける、進学などの際に別居親の承諾が必要になる。関係性が悪いとそのたびに家庭裁判所に行くのだとすれば、シングルマザーは非正規労働の人も多く、休みを取るので収入に影響が出る。現実的ではない」と警鐘を鳴らしました。

 当事者もリモートで参加し、「関係性を断ちたくて離婚をしても、ずっと関係性を強要されるのはつらい」と声を上げました。

 また刑法の性犯罪規定の改正についての要望書を提出した時は法務省内での対応であったのに、事前に連絡を取ったにもかかわらず要望書は路上で受け取るだけだったとの報告があり、背景に「政治的圧力があるのでは」との声がメディアから上がっていました。

 共同親権を強力に進める「共同養育支援議員連盟(柴山昌彦会長)」は、旧統一協会と懇意な関係が取りざたされている下村博文衆院議員がけん引してきたもので、離婚後の共同親権実施のために発足した「親子断絶防止議員連盟」を母体に発展した団体との指摘も会見で出されました。

東京民報2023年9月3日号より

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