三井不動産などが行う神宮外苑(港・新宿区)の再開発事業で、計画の見直しを求める市民グループ「神宮外苑と国立競技場を未来に手わたす会」は4日、「神宮外苑の樹木伐採は中止を! 再開発計画は再考を!」との声明に、作家や俳優、建築家など各界の著名な78氏から賛同を得たと明らかにしました。同グループは、2020東京五輪の際に、国立競技場の改修を提案して建て替えに反対し、当初案(ザハ・ハディド氏デザイン)撤回につなげたことで知られます。
再開発事業は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の敷地を交換して建て替え、3棟の高層ビルなどを建設。これに伴い、樹齢100年を含む多数の樹木伐採や移植が計画され、すでに今年3月から工事が始まっています。一方、反対・見直しを求める4つのネット署名には延べ31万人を超える人が賛同を寄せ、音楽家の坂本龍一氏(故人)や作家の村上春樹氏らが声を挙げるなど、計画の見直しを求める世論が今も広がっています。
しかし事業者は新たな伐採申請を新宿区に提出し、樹木の伐採や移植を強行すると見られ、これを前に「手わたす会」が同日、都庁で記者会見を開きました。共同代表の作家の森まゆみさんと建築家の大橋智子さんが出席。「環境アセスメントも不十分で、都知事も環境を守る手段をとろうしていない」と強調。「賛同されたみなさんは心配されている」「これ以上、都心の緑を減らさず、むしろ増やしてほしい」と訴えました。
主な賛同者は、作家の浅田次郎さんや椎名誠さん、落合恵子さん、俳優の秋吉久美子さん、写真家の大石芳野さん、建築家で東京大学名誉教授の大野秀敏さんら。ほかにも映画監督や建築家、ミュージシャンなどが名を連ねています。元オランダ大使の東郷和彦さんは「胸がつぶれる思いでいました。(略)賛同者に加えていただけるなら喜んで参加します」など、多くが賛同メッセージを寄せています(別項に一部掲載)。
サザン・桑田さん 憂いを新曲に込め
サザンオールスターズの桑田佳祐さんが、デビュー45周年を記念して2日発表した新曲「Relay~杜(もり)の詩(うた)」について、神宮外苑の再開発に反対していた音楽家の故・坂本龍一さんの遺志を継ぐために作った曲だと同日に出演したラジオ番組「桑田佳祐のやさしい夜遊び」(TOKYO FM)で明かしました。
桑田さんは「いわゆる神宮外苑再開発という問題がありまして、私もぼやっとしていてよく知らなかったんですけれども、3月にお亡くなりになった坂本龍一さんからいろいろ提示していただいたことの一つとして、受け止めて作った曲」と語りました。タイトルの「リレー」には「後に残す」「つなぐ」の意味を込めたと紹介しました。
歌詞は「誰かが悲嘆(なげ)いてた 美しい杜(もり)が消滅(き)えるのを」「自分が居ない世の中 思い遣るような人間(ひと)であれと」「麗しいオアシスが アスファルト・ジャングルに変わっちゃうの?」「未来の都市が空を塞いで良いの?」などとあり、神宮外苑の樹木伐採への憂いをストレートに訴えています。
東京民報2023年9月10日号より