東京都教育委員会が昨年11月に実施した英語スピーキングテスト(ESAT‐J=英スピテスト)で、同テストの都立高校の入試活用に反対する保護者や英語教育の専門家、都議らは9日、「解答する声が聞こえた」などのアンケート結果を示して、受験生らへの調査要望をしたのに対し、都教委の「行わない」との回答を受けて記者会見を開きました。改めて入試への活用中止を訴えました。
「入試選抜への活用を中止するための都議会議員連盟」などが試験後、受験生らに行ったアンケートには、「まわりの生徒の解答する声が聞こえた。何を言っているか分かった」など、音漏れを指摘する解答が保護者を含めて86件も寄せられました。
議連などが事実確認のために、受験生全員を対象にした調査を行うよう都教委に要望していましたが、「特定の解答を聞き分けて、それをまねすることは現実的とは考えられない」として調査は行わないと回答。昨年度に続き今年度も入試の合否判定に採点結果を活用する方針です。
実態調査せずに適正とは言えず
議連事務局長の、とや英津子都議(日本共産党)は都教委の対応について、「論理に欠け、あまりにも不誠実。テストは適正に行われたとは到底言えない」と批判。「入試改革を考える会」の大内裕和・武蔵大学教授は、同じテスト問題を使用して前半、後半に受験生を分けて実施した昨年度の平均スコアが、各グループで同じだった問題について、根拠を求めているのにいまだ示されていないと指摘しました。
都内公立中学3年の保護者は「子どもがテストの評価を知りたいと希望したので、都教委に問合せたが担当は電話に出ず、根拠が不明のまま(受験校に提出する)調査表に記載される」と指摘。
100点満点のスコアを6段階で評価されることについて「80点と100点が同じAで20点、65点と79点が同じBで16点となり、『正しく評価されていない。不公平だ』と、子どもは怒っている。不透明で不公平な入試活用に反対します」と語りました。
根拠もなく個人情報保存
運営を担った出版大手のベネッセは今年度で撤退し、英国の公的な文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシルが、今年度から拡大実施する中学1・2年生と来年度以降の全学年を運営。都は35億円を当初予算に盛り込みました。
議連などによると、都教委は中1と中2の保護者に提出を求めた同意書で、中3受験時の個人情報提供まで同意を求め、批判を受けて訂正版を配布。ところが、訂正前の同意書でも支障はなく取り直す必要はないとしています。
中1の保護者は「このようなずさんな対応は許されない。中1、中2の試験は中止し、同意書を取り直すべきだ」と批判。入試に関わる基礎事項だとして登録情報を卒業後4年間保存するとしていることに対しても、「登録した個人情報は都立高校の受験には関係なく、全員が都立高校を受験するわけでもない。根拠は全く納得できない」と憤りました。
公立中学校の元英語教諭で現在は週2日の非常勤講師をしている女性は、「15分の英スピテストに何十億円もかけ、かたや先生が不足している。教育の質がどうなるのか心配だ」と語りました。
東京民報2024年2月18日号より