親江会の名、百年残す 江戸川区 被爆者の証言映像制作開始〈2024年4月28日・5月5日合併号〉 

 来年は広島と長崎に原子爆弾が投下され、80年を迎えます。壮絶な被爆の実相を語り継ぎ、小学校や中学校での平和教育など、被爆体験の継承を活発に続けている江戸川区の原爆被害者の会「親江会しんこうかい」は、昨年12月から会員の被爆証言を映像に記録する取り組みを始めました。証言映像は、広島平和記念資料館や長崎原爆資料館、東京都立図書館、国立国会図書館、江戸川区内の図書館に寄贈する予定です。

撮影の合間に打ち合わせなどを行う親江会のメンバー。みんなに信頼されている山本会長(中央)はプロデューサー的役割=4月20日、江東区

 2023年3月末時点で、全国の被爆者数(被爆者健康手帳所持者数)は11万3649人、平均年齢は85.01歳。親江会は1966年に発足し、会員が200人を超えた時期もありましたが、毎年10人ほどが亡くなっています。現在の会員数は約120人で、最高齢は101歳。施設の入所者や体調に不安のある人なども多く、主力メンバー5人ほどでパワフルに活動しています。7歳の時に広島で被爆し、後頭部と腕にただれるほどの火傷を負った山本宏会長(86)は、「親江会は絶滅危惧種」と例え、後世への引き継ぎに力を入れます。

数年で命なくなる

 証言映像の記録を始めたのは、「仲間がどんどん死んでいくから、遺言のような感じかな。我々被爆者は、あと数年でいなくなる。それは分かり切っとるのだから」と語る山本会長。時間がないことへの焦りが時折、垣間見られます。

 これまでに撮影したのは5人(4月22日時点)。証言を依頼しても断られるケースが多く、難航しています。山本会長は、「何十年もかけて思い出さないようにしていた記憶が、話すたびにあふれ出てくる。残酷なんよ。だから、みんなに強要はできんのよ。耳が聞こえない人は、筆談でもお願いしたい」と、深刻な事情を話します。

 山本会長自身も被爆から70年以上、原爆の情報を意図的に遮断し、沈黙を続けていました。親江会からの要望で、被爆証言を人生で初めて語らざるを得なくなった17年7月。壇上で証言中、奥深くに封じ込めていた凄惨せいさんな記憶がよみがえり、感情がこみ上げ、原稿を読むことができなくなりました。「2、3日のうちに夢見るんだよ。記憶から抜けていた被爆時の景色が、鮮明に戻ってくる。夢で思い出したことがいっぱいあるよ」

 山本会長が原稿を読めなくなった際、代読したのが、今回の証言映像でナレーターを務める原田佳子さん(50)。テレビのアナウンサーなどを務め、現在はラジオのパーソナリティーとして活躍しています。

 撮影を担当するのは、千葉県松戸市在住の泉大和さん(75)。山本会長に懇願され、撮影と編集を担うことになりました。

被爆体験を話す斉藤副会長(右)、聞き手の原田さん=4月20日、江戸川区

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