事故の教訓生かし改善を 客室乗務員 ライセンス制求め署名〈2024年5月26日号〉
- 2024/5/27
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今年1月に羽田空港で起きたJAL機と海上保安庁機の衝突事故では、機体が炎上し全損となる中で乗客を機内に取り残すことなく避難誘導したとして「奇跡だ」と日本航空の客室乗務員が称賛されました。これは客室乗務員の日ごろの訓練と努力の結果だと言われています。しかし一方で、日本の客室乗務員の配置と処遇は世界標準から大きく後れを取るものです。一人でも加入ができ、外国籍や日本の航空会社の客室乗務員が加盟するジャパンキャビンクルーユニオン書記長の酒井三枝子さんに聞きました。
酒井さんは、1月の事故について「事故機にはファーストクラスがあったため客室乗務員は通常8人のところ1人多く9人編成で、機内8カ所のドア全てに人員が配置されていた」といいます。さらに、「インターホンやアナウンスシステムが機能しなくても、脱出に適した非常口を客室乗務員が即座に判断して行動したことが、全員の脱出につながった重要な要素だった」と指摘します。
ICAO(国際民間航空機関)は2017年に「客室乗務員の最低必要人数の設定に関するマニュアル」を制定し、過去の事故の事例をもとに1カ所のドアに1人の配置を推奨。「緊急脱出の際、1人の客室乗務員が2カ所の非常口を担当するのは困難である」と強調しています。
酒井さんは「1月の事故では1人の客室乗務員が1つの非常口を担当できる環境でした。しかし、国内とアジア路線に多く就航するB(ボーイング)787型機の場合、ドアが8カ所あるのに対して国内大手のJALやANAで客室乗務員が6~7人の編成が存在する」と言います。
事故の際、客室乗務員は乗客の安全確保と避難誘導の最先端に立つ保安要員であることが1月の事故で際立ちました。航空労組連絡会(航空連)と客室乗務員連絡会(客乗連)は「1カ所のドアに1人を配置すべき」だと強く訴えています。
JALではパイロットや整備士の組合との統一要求で交渉してきた結果が実り、7月からB787型機の客室乗務員の編成が8人以上となることが公表されています。
保安要員として
酒井さんは「パイロット、整備士、運航管理者は航空従事者として国家資格があります。一方で、客室乗務員は職業分類上で飲食物給仕者とされています」と指摘。
さらに「航空法に基づいて定められている運航規程要綱細則では資格・乗務要件、職務、訓練・審査、緊急事態発生時措置等が記され保安任務が課されています。米国、EU諸国など他国では客室乗務員は国家ライセンスとなっているのが主流です」と告発します。