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- 人体への影響、国が検証を 横田周辺の有機フッ素汚染 京都大名誉教授 小泉昭夫氏が講演〈2020年3月1日号〉
人体への影響、国が検証を 横田周辺の有機フッ素汚染 京都大名誉教授 小泉昭夫氏が講演〈2020年3月1日号〉
- 2020/2/25
- Editors’ Choice PFAS汚染を追う, 平和, 横田基地
横田基地周辺の地下水が、人体への有害性が指摘される有機フッ素化合物(PFOS、PFOA=ことば)に高濃度で汚染されていた問題で、京都大学名誉教授で同化合物の汚染を早くから研究してきた小泉昭夫氏が、羽村市で2月24日に講演しました。PFOS、PFOAによる水道水汚染が明らかになっている沖縄県内で、低体重児の出産割合が、汚染が疑われる地域で高くなっている可能性を示す独自の分析データを説明。人体への影響の国による検証と、厳しい飲料水基準の設定が必要と求めました。
米軍基地周辺では、航空機の火災時に使う泡消火剤にPFOSやPFOAが使われていたため、同化合物による地下水や土壌の汚染が世界的に問題になっています。
沖縄県では、嘉手納基地や普天間基地の周辺で、高濃度の汚染が発覚。水源の汚染が明らかになり、県は活性炭のフィルターで水道水からPFOS、PFOAを除去するなどの対策をとっています。
低体重で出生増加の可能性
小泉氏は、汚染された地域の一つ、宜野湾市の住民からの要請を受けて、沖縄での汚染状況も調査しています。
有機フッ素化合物の健康被害では、発がん性のほか、出産時に胎児が低体重になる割合が増えることが指摘されています。
沖縄県では以前から、2500グラム未満という、WHO(世界保健機関)が定める基準の低出生体重児の割合が、全国平均よりも高いことが指摘されていました。県は1999年に、調査報告書をまとめています。
小泉氏は、この時の調査で使われた1977年から93年のデータを分析。水道水汚染が疑われる地域と、見つかっていない現在の南城市を比較すると、汚染がない地域では低体重の割合が平均6・43%だったのに対し、汚染があった地域は7・31%と1㌽近くも高くなりました。
沖縄での低体重出生の多さは基地騒音の影響などが指摘されてきたものの、有機フッ素化合物の汚染に注目した分析は小泉氏独自のものです。

小泉氏は講演で、「他の要因の関与の可能性など、検証すべき課題はあるが、有機フッ素化合物の汚染が影響を与えている可能性はデータ上、十分に考えられる。国が責任をもって調査すべきだ」と指摘。「沖縄、横田、さらに世界各地のアメリカ空軍の基地周辺で汚染が大きな問題になっている。各地の人々が連携し、安全に暮らせる環境を守ることが必要だ」と強調しました。
飲料水基準を厳しいものに
厚生労働省の検討会は2月19日、PFOS、PFOAの水質基準となる「暫定目標値」を1リットルあたり50ナノグラムとする案を公表しました。小泉氏はこれを受けて、低出生体重児の発生を防ぐ観点から、飲料水の水質基準のあり方も提案しました。
以前、化学メーカーによるPFOS、PFOA汚染が深刻だった大阪府の守口市・摂津市で、全国平均よりも高かった低体重児の出産の割合が、メーカーの製造中止によって2012年以降、全国平均と同じになっていることに注目。同地域の住民の血液中の有機フッ素化合物の濃度を前提に、飲料水の基準を算出すると、1リットル当たり10ナノグラムになることを指摘。50ナノグラムという国の案は高すぎるとしました。
小泉氏によると、アメリカのいくつかの州がすでに10ナノグラム以下の飲料水基準を設けていいます。また、沖縄での水道水の汚染除去の実績から、10ナノグラム以下は達成が難しい数字ではないとしています。

学習会は、東京都の調査で立川市の井戸で1リットル当たり1340ナノグラム、武蔵村山市の井戸で143ナノグラムという、高濃度のPFOS、PFOA汚染が1月に明らかになったことを受けて、市民による実行委員会が開きました。
有機フッ素化合物の汚染を早くから研究してきた小泉氏の講演に注目が高く、立ち見が出るほどの盛況でした。講演のほか、この問題で市民のネットワーク組織を結成する呼びかけや、取り組みの交流が行われました。
PFOS、PFOA、PFASとは
PFOSはペルフルオロオクタンスルホン酸の略。PFOAはペルフルオロオクタン酸の略。PFASはペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の略。
耐熱性や耐薬品性など、すぐれた安定性がある界面活性剤で、撥水剤や防汚剤、フライパンのテフロン加工、泡消火剤などに広く使われました。多くの工業分野ですでに使用されていませんが、自然界に残された両物質はほぼ分解されず残り続けるため、フォーエバーケミカル(永遠の化学物質)とも言われます。
2000年代にアメリカで、大手化学メーカーデュポン社による飲み水汚染の健康被害が調査され、注目されました。研究段階にあるものの、人体への残留性が高く、発がん性や、血液中のコレステロール値を増やすこと、妊娠性高血圧の発生増などの危険性が指摘されており、各国で規制の動きが出ています。
(2020年3月1日号より)