松岡美術館(港区)は地下鉄白金台駅からイチョウ並木におしゃれなブティックやレストランが並ぶプラチナ通りを進んだ先にあります。

松岡美術館は実業家であった松岡清次郎が蒐集した古代オリエントと古代東洋の美術・彫刻、東洋陶磁や日本画、西洋彫刻を収蔵・展示している個人美術館です。
改修のため休館していましたが、1月26日にリニューアルオープン。「[再開記念展] 松岡コレクションの神髄」が開かれています。4月17日まで。
「館蔵 東洋陶磁名品選」では、景徳鎮窯の「青花脂紅双鳳文扁壺」(大清乾隆年製銘)や唐時代の「三彩馬」、さらには日本の有田古九谷様式の「色絵芭蕉柳図輪花鉢」などを展示。
「館蔵日本画 花鳥風月」では重要文化財に指定されている伝周文の「竹林閑居図」、川合玉堂の「白鷺」。「古代ギリシア・ローマ大理石彫刻展」ではヘレニズム期の「アレキサンダー大王胸像」などが鑑賞できます。
常設展では、古代オリエント美術、ガンダーラ・インド彫刻、ヨーロッパ近代彫刻を展示。
なかでも日本の仏像の原点にあたるガンダーラ(現パキスタン北西部)の仏像は、古代ギリシア・ヘレニズムの影響を受けたガンダーラの仏教彫刻を好んだ松岡が蒐集に力をいれていたものです。古代インドでは釈迦の像を造ることは禁止されていましたが、ガンダーラに仏教が伝来、西洋文明と融合することで仏像が誕生しました。ギリシャ彫刻のように彫りの深い顔立ちが特徴です。

「私立美術館は美術品を蒐集した館の創立者の美に対する審美眼を、その一つひとつの美術品を通して、ご覧いただく方に訴えるべきところ」と語った松岡の美意識にかなった逸品が並ぶ展示空間には、透き通った空気感がありました。小品ですが鍋島藩窯の「色絵紫陽花図皿」はコレクターが手のひらにおき、愛でる姿が浮かぶ思いでした。
国立科学博物館自然教育園
松岡美術館に隣接して国立科学博物館附属自然教育園があります。この地域は武蔵野台地の東外れにあたり、縄文中期には人が定住。平安時代には染料となるムラサキの栽培がおこなわれていたと言います。江戸期には高松藩主の下屋敷として回遊式の庭園が整備され、園内の松の古木にその名残を見ることができます。
大都会のなかに残された数少ない森林緑地で、散策路をめぐると「ムクノキ」の巨樹やカワセミも飛来する池など、都心にいることをひととき忘れさせてくれます。
東京都庭園美術館
自然教育園の先に、かつて白金プリンス迎賓館の名で国賓や公賓の来日の際の迎賓館としてつかわれた建物を活用した東京都庭園美術館(年数回、企画展開催)があります。

4月10日まで「奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム」展。シュルレアリスムは第1次世界大戦と第2次世界大戦のはざまで、ロシア革命の思潮に感化されたフランスの芸術家たちが、資本主義の抑圧と芸術のサロン化に反逆し、詩人ブルトンが発した「シュルレアリスム宣言」に共鳴して生みだした20世紀を代表する芸術思潮。ブルトンとともに大きな影響をもたらしたルイ・アラゴンはのちに小説「レ・コミュニスト」を発表、革命のたたかいに身を投じました。
企画展は、ダダをはじめとする美術分野におけるシュルレアリスムの展開としてのモード=ファッションの作品を展示しています。

明治学院記念館
白金台駅から八芳園の角の桑原坂を下っていくと明治学院大学白金キャンパス。19世紀末から20世紀初頭にかけて建設された明治学院記念館・礼拝堂の歴史的建物が見えてきます。また、構内には重要文化財のインブリー館があります。明治学院はヘボン式ローマ字を創案したジェームス・カーティス・ヘボンが設立した「ヘボン塾」が起源です。
(東京民報2022年2月6日号より)