東京都教育委員会が 2023年度の都立高校入試から予定する英語スピーキング(会話)テストの導入中止を求める市民団体は12日、同日までに集めた賛同署名9392人分を都教委に提出しました。英語教育の研究者らでつくる「都立高校入試へのスピーキングテスト導入の中止を求める会」が、都庁で記者会見を開きました。昨年12月からオンライン署名Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」で呼び掛けてきました。
ネット署名9千人分提出

都教委は英語で話す力を高めることを目的に今年11月27日(予備日12月18日)に、都内公立中学校3年生の全生徒(約8万人)を対象に「中学校英語スピーキングテスト( ESAT-J)」を実施。テストは受験者が専用のタブレット端末に解答音声を録音し、6段階で到達度を評価。テスト結果は23年度都立高校入試で総合得点に20点満点で加算して活用する方針。試験は都と協定を結ぶ大手教育関連会社ベネッセ(本社・岡山県)が担い、採点はフィリピンにある同社の関連機関が行います。
同会の池田真澄会長は会見で「都教委は他県での活用に向けて連携する姿勢を示している。影響は全国に波及しかねない」と指摘しました。
元公立中学校教員の吉岡潤子さんは、入試へのスピーキングテスト導入で、生徒の学習意欲や英語を学ぶ楽しさ、教師の授業づくりの楽しさが失われると指摘。今年受験する中学生や保護者に対して都教委からの説明もないとし、テスト導入を見直すよう訴えました。「入試改革を考える会」の大内裕和さん(武蔵大学教授)は、ESAT‐Jとベネッセの英語資格試験GTECが問題も採点基準も類似していると指摘。「GTECを実施する中学校の生徒が入試で有利となり、英語教育企業間の公平・公正な競争を妨げる」と指摘。
また最高点100点の得点を6ランクに分ける配点方法が公平性に欠くとし、「1点差が合否を分ける入学試験に向かない。受験生や保護者の理解・納得も得られない」と強調。さらに「学校外教育機関を利用できる生徒が有利となり、出身家庭の経済力による教育格差が拡大する」とのべました。
同会では引き続き、署名の取り組みをはじめ、スピーキングテストの問題を広く知らせていきたいとしています。
〈2024年4月24日号〉