気候危機の影響が制御できなくなる臨界点に達するまでのタイムリミットを示す日本初の「Climate Clock(クライメートクロック)=気候時計」が15日、渋谷キャスト(渋谷区)で開かれた記者会見で披露され、渋谷駅ハチ公前広場の観光案内所「SHIBU HACHI BOX」に初号機が設置されました。

渋谷の街に百台目指し
プロジェクトは18〜21歳の若者7人を中心に構成される、気候変動アクションチーム「a(n)action(アナクション)」と、アート・メディア・エンターテインメントの力で社会課題解決に取り組む「SEAMES( 目黒区)」が共同でスタート。日本の若者カルチャー発信地とされる渋谷の街に気候時計を設置することを目的に、昨年12月7日から目標金額1000万円のクラウドファンディング(ネット募金)を実施。同メンバー酒井功雄さん(21)の誕生日に当たる今年1月27日までに期限を設定し、短期間に1546人の支援を得て、総額1353万6000円を集めました。

気候時計は、地球の平均気温上昇を産業革命以前と比べて1.5度以下に抑えるため、世界で許容された二酸化炭素排出量の余地を使い切ってしまうまでの時間をカウントダウンで表示します。
アナクションは、昨年11月に結成。チーム名には「an action(一つのアクション)」、「unaction( アクションではない当たり前の活動)」のほか、(n)を数学記号とみなし、代数学のように好きな単語に置き換えることができるなど、深い意味が込められています。
記者会見では小型機(約14cm×40cm)と、当日に完成したばかりの中型機(約50cm×150cm)をお披露目。パネルや基盤がむき出しになった、街中でも目に留まりやすい異物感のあるデザインに仕上げています。
文字盤のコードを読み込むと時計の詳細が分かり、政府への気候変動対策を求める宣言にワンクリックで簡単に参加できます。宣言数が1万回を超えるごとにメンバーらが環境省に通知し、さらなるアクション喚起を要請。サステナブル(持続可能)な企業の動画枠を設け、再生回数にともない都市農園が増えていくといったファンドも、運用される予定です。
酒井さんは「日本は海外に比べ、気候変動に気づける仕組みがなく、行動を起こす人が圧倒的に少ない」と指摘。そこで、約1年間で100台の小型機を渋谷区内に設置予定。日常の中で、気候変動を考えるきっかけにつなげる考えです。
目標達成はみんなの力で

ゼロから始めたプロジェクトが実現したことについて、同プロジェクトの発起人でもあるナイハード海音さん(18)は東京民報の取材に「みんなの力が集まれば達成できると感動した。同時に希望をもらい、少しずつでも自分にできることをやってみれば大きな力になることが証明された」と振り返りました。そして「すごく大変だったけど、設置できた安心感とうれしさでつらかったことは忘れた。楽しい気持ちが勝っている」とよろこびを語りました。
黒部睦さん(20)は「プロジェクトが成功するのか、みんな不安を抱えていた。私は2年半くらい気候変動ムーブメントを続けてきたけど、思いやメッセージを形にするのは新しい感覚。設置した瞬間から注目度が高いことをひしひしと感じ、今までにないアクションだったと改めて実感する」と述べました。
今後、全国の中学校や高校を気候時計が巡っていく、「旅するClimate Clock」という新企画を始動。渋谷区以外の地域からも設置の要望があり、日本各地に広げていく予定です。「いろいろ温めている企画があるので、実現させていきたい」と、黒部さんは笑顔で話します。
現在、時計が示す時間は約7年88日(4月25日時点)。気候時計が示すタイムリミットは、この瞬間も1秒ずつ減っています。
〈2022年5月1日・8日合併号より〉