街角の小さな旅29 冒険の世界と元気な商店街 植村冒険館と庶民のまち
- 2023/1/11
- 街角の小さな旅

日本を代表する登山家・冒険家、植村直己の「植村冒険館」は地下鉄板橋区役所前駅を出て旧中山道を超えた先にあります。
植村の登山家としての一歩は明治大学山岳部。その山岳部の白馬岳新人歓迎合宿に参加した植村は、一番はじめに動けなくなり脱落、また、登山行ですぐに転ぶことから「どんぐり」のあだ名で呼ばれることになりました。植村はその屈辱を跳ね返すために、独自のトレーニングを積み、年120日を超える登山を重ねることで、世界でトップクラスの登山家に成長したといいます。

そして大学卒業後、渡欧。1966年のモンブラン(4807㍍・ヨーロッパ大陸)の単独登頂を皮切りに、キリマンジャロ(5895㍍・アフリカ大陸)、アコンカグア(6959㍍・南アメリカ大陸)、世界最高峰エベレスト(8850㍍・アジア大陸)、夏期での登頂に成功、後に冬期の登頂後に遭難したマッキンリー(現在の正式名称はデナリ。6194㍍・北アメリカ大陸)を踏破。世界初の五大陸最高峰登頂者に輝きました。
また、冒険家としても犬ぞりでの北極圏1万2000㌔㍍の走破、世界初の単独犬ぞりによる北極点到達、同じく世界初の グリーンランド3000㌔㍍縦断などを成し遂げ、世界にその存在を知らしめました。
冒険館の最初に展示されているのが、グリーンランド縦断に使われた犬ぞり(複製)です。植村は犬ぞりに馴れるためにグリーンランドでエスキモーとほぼ半年にわたる共同生活を過ごしましたが、ここで習った犬ぞりの知識をもとに長距離の走破にあわせた改良が施されています。
3階の展示コーナーの入り口では大スクリーンによるイントラクションシアターがあり、「エベレスト」「北極」「アマゾン」をテーマにした映像が迎えてくれ、植村の冒険の姿を伺うことができる常設展示と【エベレスト登頂/植村直己・世界最高峰に挑む】(1月29日まで)の企画展示(年3回)が待っています。
旧中山道

冒険館に向かう途中に仲宿の額が掲げられたゲートがあります。このあたりは、かつて江戸五街道の一つ中山道の板橋宿としてにぎわったところ。日本橋から最初の宿場で、東海道の品川宿、甲州街道の内藤新宿、奥州街道・日光街道の千住宿とならんで江戸四宿の一つとして栄えたところで、加賀百万石前田家(石神井川沿い、現加賀公園)など大名の下屋敷が置かれたところでもあります。
宿場には上宿、仲宿、平尾宿があり半里(2㌔㍍)もつづいていました。その途中に縁切榎えんきりえのきがあります。この榎の下を通ると離縁となるとして婚礼の道中は避けて通ったと言われていますが、一方、悪縁は切ってくれるが良縁は結んでくれるとされ、いまは縁結びを願う若者が訪れます。
こども動物園
仲宿商店街から少し入ったところにこども動物園があり、子ども連れのファミリーでにぎわっています。ポニーの引馬やモルモットの抱っこ、ヤギ・ヒツジの放し飼いなど子どもたちが動物に触れあう歓声が響きます。2年前の再開・改修にあたって草屋根など環境に優しい設計が施され、ヤギの草屋根のぼりが名物。
歴史誇る商店街

旧中山道の仲宿商店街をはさんで西と東に全国に知られ東京を代表する商店街があります。一つは東武東上線大山駅にひろがるハッピーロード大山商店街。銀座よりも早く歩行者天国を実施した商店街で、中小企業庁の全国「がんばる商店街77選」に選定された商店街です。もう一つは惣菜の商店街としてテレビに度々登場する十条商店街(JR十条駅)。なかでも100年の歴史を誇る十条銀座商店街は東京の三大銀座商店街の一つ。いまこの二つの商店街が東京都がすすめる道路建設(特定整備路線)によって分断、破壊されようとしています。都民の声で建設をストップさせましょう。
末延渥史
(東京民報2023年1月15日号より)