本書は、2019年秋に行われた京都労働者学習協議会での「市民のための地方自治教室」の講義と、それをもとにした『民医連医療』の連載に加筆修正したものです。
地方自治とは何か、その本質について歴史的経緯を踏まえ、丁寧に解明しています。
明治憲法には「地方自治」という条項はありませんでした。「役所」「役場」はあっても、国の出先機関にすぎませんでした。

1300円+税
おかだ・ともひろ 1954年富山県生まれ。京都橘大学教授、京都大学名誉教授。自治体問題研究の著書多数
地方自治・地方自治体が誕生したのは、戦後、日本国憲法が制定され、その一環として地方自治法が出来てからです。
憲法は、国民主権、人権尊重主義、平和主義を明言、地方自治に関わる第8条を新設し、地方自治体の首長、議員はすべて主権者が選挙で選び、国や地方自治体の公務員は「全体の奉仕者」でなければいけないとしました。
地方自治法「第1条の二」は、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本」とするという地方自治体の本旨を明確にしています。
憲法と地方自治法が制定されましたが、地方自治が憲法の精神に立ち、主権者のものになっているかどうか、本旨の役割を果たしているかどうかは戦後の歴史の中で一貫して激しいせめぎあいとなっています。
本書では、「『革新自治体』の時代」から「地方創生」、「自治体戦略2040構想」やデジタル化など、自民党政治による地方自治体の改変の狙いと問題点、自治体を主権者のものにする取り組みをわかりやすく解説しています。
著者が強調しているとおり、コロナ禍と国の悪政のもとで、地方自治体が憲法の精神に立ち、主権者のものになっているかどうか、本旨の役割を果たしているかどうかが、鋭く問われています。
統一地方選挙が近づいています。地方自治を私たち主権者のものにするためには、どういう首長、どういう議員を選択するのかが極めて大切です。
地方自治とは何か、何が求められているのかを学べる時宜にかなった一冊です。(柏木新・話芸史研究家)
〈東京民報2023年3月19日号から〉