戦争の芽つぶすのは今 練馬区 暉峻淑子さん講演〈2023年8月27日号〉

 戦争への動きが強まっているいま、貴重な戦争体験を語り継ごうと、練馬区の東京保健生協学園通り支部は19日、埼玉大学名誉教授の暉峻淑子(てるおかいつこ)さんを招いて、平和と音楽のつどいを開催しました。

練馬区 暉峻淑子さん講演

「戦争は国家による殺人」と語る暉峻淑子氏=19日、練馬区

 18回目となるつどいは、戦争体験を語り継ぐことを目的に、コロナ禍で一度だけ中止したものの、毎年開かれています。

 戦後78年が過ぎ、体験を語ることができる人が少なくなるなかで、幅広い層が参加できるイベントを目指しています。

 支部長の参沢幸夫さんは「ロシアとウクライナの戦争が始まって平和への関心は高まっているが、若い人たちの参加が少ない」と課題を語りました。

 「平和への思いを語る~戦中、戦後、そして今思うこと」と題して講演を行った暉峻氏は、幼少期の戦争体験を語りました。暉峻氏は1928年の大阪生まれ。今年95歳になります。

 戦争が激しくなるにつれ、40キロ行軍や竹やり訓練、防空壕堀などに、子どもも大人も次々と動員されていきました。

 「賛成・反対」など議論する間もなく、国民みんなが巻き込まれていったと振り返りました。

 暉峻氏の周りでも多くの人が亡くなり、また戦後も残された人は苦しんだと、いくつかのエピソードを語りました。

級友とさつまいも

 小学校で共に学んだ級友が、「国のため」と周囲から推されて14歳で出征することになりました。何もなかった時代に、農家に何とか分けてもらったサツマイモをふかして、送る会をしてあげたのが精いっぱいでした。戦後、パーティーに参加する機会があっても、級友とサツマイモを思い出して楽しめないといいます。

子を見殺しに

 戦後に久しぶりに会った姉の友人は、抜け殻のように感情のない人になっていました。2人の子を連れて空襲から逃げる途中で、倒壊した建物の下敷きになった1人をどうしても助けられませんでした。心は罪悪感でいっぱいで、死ぬまで苦しめられたそうです、と振り返りました。

優しかった先生が

 中学の音楽教師が理由も言わないまま、突然退職しました。海軍に出征した息子が「返事が小さい」という理由で頭を殴られ、廃人になって帰ってきたことで、故郷で隠れて暮らすしかなかったといいます。

子どもを食べさせるために

 近所の女性が暉峻氏の台所へ食べ物を盗みに入りました。それを見た暉峻さんの母親は戦後までそのことを言いませんでした。普通の人が犯罪に手を染める悲しい社会でした。

 暉峻氏は、「戦争の芽は小さいときにつぶさないと、大きくなったらなすすべがなくなってしまうことを日本は経験済みだ」と語りました。  国家によって国民が殺されるというだけで、戦争に反対する理由には十分。「国民を戦争に引きずり込む政府をどんなことがあっても支持してはいけない」と力を込めました。

東京民報2023年8月27日号より

関連記事

最近の記事

  1. インスタライブで語り合うeriさん(左)と田村さん=4月18日  日本共産党の田村智子委員長…
  2.  めぐろ被災者を支援する会は6月30日まで、控訴費用などを求めるクラウドファンディングを行っていま…
  3. 共同街宣で酒井候補らと共に訴える田村氏=4月16日、江東区  公職選挙法違反事件(買収等)で…
  4.  目黒区長選は4月21日投開票され、「みんなの目黒区長をつくる会」の前都議、西崎翔(つばさ)氏(4…
  5. 1面2面3面4面5面6面 【1面】 余暇と遊びは基本的権利 子どもの権利条約 批准から3…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

#東京民報 12月10日号4面は「東京で楽しむ星の話」。今年の #ふたご座流星群 は、8年に一度の好条件といいます。
#横田基地 に所属する特殊作戦機CV22オスプレイが11月29日午後、鹿児島県の屋久島沖で墜落しました。#オスプレイ が死亡を伴う事故を起こしたのは、日本国内では初めて。住民団体からは「私たちの頭上を飛ぶなど、とんでもない」との声が上がっています。
老舗パチンコメーカーの株式会社西陣が、従業員が救済を申し立てた東京都労働委員会(#都労委)の審問期日の12月20日に依願退職に応じない者を解雇するとの通知を送付しました。労働組合は「寒空の中、放り出すのか」として不当解雇撤回の救済を申し立てました。
「汚染が #横田基地 から流出したことは明らかだ」―都議会公営企業会計決算委で、#斉藤まりこ 都議(#日本共産党)は、都の研究所の過去の調査などをもとに、横田基地が #PFAS の主要な汚染源だと明らかにし、都に立ち入り調査を求めました。【12月3日号掲載】
東京都教育委員会が #立川高校 の夜間定時制の生徒募集を2025年度に停止する方針を打ち出したことを受けて、「#立川高校定時制の廃校に反対する会」「立川高等学校芙蓉会」(定時制同窓会)などは11月24日、JR立川駅前(立川市)で、方針撤回を求める宣伝を21人が参加して行いました。
「(知事選を前に)税金を原資に、町会・自治会を使って知事の宣伝をしているのは明らかだ」―13日の決算特別委員会で、#日本共産党 の #原田あきら 都議は、#小池百合子 知事の顔写真と名前、メッセージを掲載した都の防災啓発チラシについて追及しました。
ページ上部へ戻る