自分の権利を手放さないで 発達障害の法律相談室 弁護士 伊藤克之さん〈2025年4月27日,5月4日号〉

 改正障害者差別解消法が施行され、民間事業者に「合理的配慮義務」を義務付けてから1年あまりが経ちました。しかし官公庁でも障害者差別による不当労働行為が横行するなど、理解は進展していないようです。一方で内閣府の障害者差別に関する一元的な相談窓口「つなぐ窓口」には、月に200件を超えるペースで相談が寄せられているといいます。自身の発達障害を公表し、発達障害者の法律相談室を設けて活躍する、伊藤克之弁護士を日野市の事務所を訪ねました。

 ―弁護士になったきっかけは。

 伊藤 高校生の時、現代社会の授業で水俣病などの公害問題などに触れたんです。被害の写真に衝撃を受けたというのが最初のきっかけです。そこで人権活動をやりたいと思いました。

 法学部に進み、大学時代にゼミのフィールドワークで過労死問題などに触れるにあたって、弁護士として労働事件に労働者の立場から関わり、人間の尊厳を守りたいと考えていました。

発達障害の人への配慮は「本人に何をしたら良いかと聞いてもいい」と語る伊藤弁護士

 ―それで国家賠償請求や労働事件に取り組まれてこられたのですね。

 伊藤 弱者とされる方たちの味方として活動しながら、仕事として生活していくということに魅力を感じます。

 実際やってみると簡単ではなく、かなり厳しいです。

 裁判所は難しい相手で、いつも勝てるわけじゃありません。一方で解決になるようなこともありますので、依頼者に喜んでもらえると非常に嬉しいですね。

 ―大変なことも多そうです。

 伊藤 そうですね。20代後半で過労からうつ状態になり休職しました。復帰しても症状がひかないことがあり、それまでのように仕事が出来なくなりました。

 医師から発達障害の検査を進められて受けたところ、対人コミュニケーションが苦手な特性があるとわかりました。

 ―発達障害の検査や診断に抵抗はありませんでしたか。

 伊藤 最初は抵抗がありましたが、なかなか良くならないし、一応受けてみようかと自分なりに考えました。診断については、それもそうだなと納得して楽になりました。

支援や配慮を一緒に考えて

 ―発達障害者の生きづらさゆえの相談は多岐にわたるのでしょうか。

 伊藤 ずっと労働問題に携わってきたから、今も例えば解雇だとか、給料の未払いなども多いです。それとホームページを見て発達障害の関係での問い合わせも多いです。 

 発達障害の特性を自身が自覚していて職場にサポートを求めたけれど、うまくいかないというケースもあります。

 夫婦間でどちらかが発達障害の特性があり、離婚するかどうかみたいな話になるといったこともありますね。

 ―発達障害者への職場のサポートや、合理的配慮義務のトラブルは多いですか。

 伊藤 職場環境によって精神疾患に罹ったというケースもありますし、発達障害でサポートがうまく受けられないということもあります。

 法律に合理的配慮義務についても抽象的なことしか書いてないので、企業も中身がわからないということはあると思います。

 まず話を聞いて、本人を信じて受け止めるようにしています。その上で、どのような支援や配慮があれば働きやすくなるのかということを一緒に考えてもらいます。

 大体、相手の話を聞くだけで1時間ぐらいかかることもあります。

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