医療崩壊はなぜ起きた? 医師ら集会「必要なのは増員」
- 2021/4/6
- 新型コロナ対策
医療制度研究会の本田宏副理事長は開会のあいさつで、2023年度から医学部の入学定員を段階的に削減しようとする厚生労働省の方針について言及。「日本は人口10万人当たりの医師数が、OECD(経済協力開発機構)の平均より13万人不足している。これがコロナ禍で医療が崩壊した原因のひとつ。医学部定員の削減を止めなければ大変なことになる」と訴えました。
全国医師ユニオンの植山直人代表(勤務医)は、平時でも病院勤務医の40%が過労死ラインを超過して働いている現状を例に、医療現場の圧倒的な人員不足を強調。新型コロナ患者などの入院を担当する全国の第二種感染症指定医療機関351施設のうち、感染症専門医は100施設しか存在しない事実や、コロナ診療に従事させられる大学院生の無給医問題なども取り上げ、「経済再開の足を引っ張っているのは医療体制の貧困にある」と語りました。
保団連の山崎利彦理事(開業医)はコロナ禍で収入が激減した小児科に触れ、感染への不安から定期検診や予防接種を控えている子どもたちの将来を危惧。杉山正隆理事(歯科医)はコロナ禍の歯科軽視を懸念し、不衛生な口腔内は感染症になりやすく、歯周病がコロナ重症化のリスクを高める可能性を説きました。
日本医労連の佐々木悦子中央副執行委員長は、コロナ専用病棟への看護師配置で人員不足になり、月10回の夜勤常態化、16時間以上の長時間2交代夜勤、地域包括ケア病棟の夜勤を1人にしていた事例などを報告。「看護師は心身ともに疲れ果てている」と述べ、看護師の大幅増員を強く求めました。
大阪民主医療機関連合会の大島民旗会長(西淀病院長)は、「新型コロナのワクチン接種時期に感染者が増えた場合、同時対応はとてもじゃないが想像できない」と人員の限界を示唆しました。
保団連の住江憲勇会長は閉会にあたり、政府への要請文を発表。緊急課題として、医療従事者の健康、特にメンタルヘルスケアの体制確保、研究対策の整備や感染症専門医の増員など感染対策体制の抜本的強化、適切な労災認定の徹底、行政・病院・診療所の連携強化などを訴え。「現政権でコロナ収束がおぼつかないのは明々白々」と憤りをあらわにしました。
日本共産党、立憲民主党、国民民主党、社民党などの国会議員も参加。日本共産党の小池晃参院議員は医療法の改定に触れ、「今必要なのは医師の増員。21世紀の医療を左右する大事な法案なので、徹底的に審議して、医療のあり方を考える必要がある」と語りました。
本田氏は「日本は戦争、原発、震災にしても、検証と反省が一番不得意。今回のコロナ感染症は、日本の医療及び社会保障再生のラストチャンスだ」と、集会の最後に検証と反省の重要性を主張しました。
【東京民報2021年3月7日号より】