
JR東海のリニア中央新幹線(品川―名古屋)事業をめぐり、北品川工区(品川区)で昨年10月から「調査掘進」という名で進められている地下40メートル以深の大深度地下を巨大なシールドマシン(掘削機)で掘るトンネル工事が停止している問題で、JR東海は9日、掘削が進まない原因や今後の方針を発表しました。
これを受け、沿線ルートに関係する住民らと日本共産党の山添拓参院議員は翌10日、参院議員会館(千代田区)で国土交通省に聞き取りました。
JR東海によると、2月に掘削の効率が上がらない傾向が現れ、3月に50メートル進んだところでシールドマシンを停止。その後の点検で、掘削土に流動性を与える添加剤が、掘削機の刃が並ぶシールドマシン最前面のカッターヘッド内部に漏れており、添加剤注入設備23カ所のうち、1カ所の故障が判明。添加剤の量を手動で適切に調整できず、掘削土が注入設備の吐き出し口をふさぎ、前面に付着していることが原因と説明しています。
JR東海は今後の対応として、故障設備を修繕し、シールドマシン前面に付着した土を除去。状況次第で現地の地質や地下水の調査を行った上で、来年前半に調査掘進を再開する予定です。
山添氏は国交省の担当者に対し、「鉄道局として重大な事態だという認識はあるか」と質問すると、担当者は「事業主体(JR東海)が原因をふまえた上で、今後の対策を行っていくことが大事」と回答。山添氏は「国交省としての認識を示さないこと自体がおかしい」と述べました。
山添氏は、国交省がJR東海から本件に関する報告を受けた時期を追及。担当者は「適切なタイミングで」と言葉を濁していましたが、終盤に「発表した前日(8日)」と発言。山添氏は「JR東海は地質が分からないことも認識している。この先、住宅街の地下を掘り進めてよいものか、もっと当事者意識を持つべき」とただしました。
参加した住民からは「大深度地下使用の認可を取り消すしかない」「責任がなさすぎる」「事業側が事故を隠していたとしか思えない」などの声が上がりました。
〈東京民報2022年8月21日号より〉