光り輝く月、その前を飛ぶ自転車。乗っているのは子どもと、地球外からの生き物。多くの人が一度は目にしたことがあるであろう、映画「E.T.」の場面です▼映画史に残る名作が今年、公開から40周年を迎えました。世界で愛された映画は、歴代興行収入1位の記録を更新し、1993年まで守り続けました。本号の発行日、12月4日は、日本でこの映画が1982年に公開された日です▼「E.T.」には、スピルバーグ監督自身の体験がさまざまに投影されているといいます。地球外生命体(E.T.)は、監督の子ども時代、両親が離婚した後の寂しさを埋めてくれた、空想の友人がもとになって生み出されました。それまでのSF映画では、宇宙人は地球への侵略者として描かれることが多かったなかで、この作品ではE.T.が子どもたちと心を通わせる、かけがえのない友人として描かれます▼映画のクライマックスで、宇宙船に乗り込むE.T.に主人公が「地球に残る」と言い、互いに心の痛みを告げるシーンは、屈指の名場面です。異なる価値観や世界観の持ち主との心を開いたコミュニケーションと交流が、人を大きく成長させる―戦争と平和、価値観の衝突に揺れる現代にも、そのまま通じるテーマです。
〈東京民報2022年12月4日号より〉