日比谷公園 1世紀の樹木、伐採の危機 再開発と一体の再整備で〈2023年7月16日号〉

 都内のあちこちで問題となっている都会に茂る貴重な樹木の伐採。近代洋風都市公園の日本第一号として今年で開園120年を迎える日比谷公園(千代田区)でも、一世紀をかけて育った多くの樹木が伐採されるのではないかとの不安の声が上がっています。「日比谷公園の歴史と文化をこよなく愛する会」の人たちの案内によるフィールドワーク(漢人あきこ都議=グリーンな東京=主催)に同行しました。

「にれのき広場」からデッキ設置予定地を望む参加者。外周の樹木伐採が心配されます=7日、千代田区

超党派都議 市民とフィールドワーク

 「日比谷公園は例えるなら幕の内弁当で、誰がきても楽しめるところ。もっと良い公園にするというなら、なぜ都民の声を聞かないのか」。「愛する会」の代表で、日本庭園協会の会長でもある高橋康夫さんが、語気を強めます。

 この日、同公園を主に案内したのは、他に元管理所長の高橋裕一さん。呼びかけに応じた共産党、生活者ネットなどの都議や学生、市民らが参加しました。

 日比谷公園は1903年、国内初の洋風近代式公園として開園。設計者は「日本の公園の父」とも呼ばれた林学博士の本多静六氏です。高橋さんらの説明によると、当初は植栽した苗木がまだ成長しておらず、「カクラン(霍乱=日射病)公園」と揶揄されましたが、本多博士らの植栽計画が実を結び、公園内、外周とも樹木が立派に育ちました。今では都心のオアシスとなり、多くの人に愛されています。

 公園内の小音楽堂は、1905(明治38)年以来、洋楽普及のシンボルとして親しまれ、大噴水は戦後復興のシンボルとして、今では日比谷公園に欠かせないものとなり、人々の憩いの場の中心となっています。

 高橋さんらは、こうした日比谷公園の成り立ちを説明し、噴水広場がある日比谷門を出発。日比谷通りの歩道を東に進むと、公園側から緑が張り出し、涼しげな日影をつくっていました。一行は有楽門から公園の中に入り、2時間ほどかけて視察しました。

400〜500本 伐採の恐れ

 日比谷公園の再整備計画は、公園周辺を国際ビジネス交流ゾーンと位置付け、「緑豊かな都市環境を整備する」との名目で、2017年設置の「日比谷公園グランドデザイン検討会」での議論や、都公園審議会の答申をもとに都が再整備計画を策定。都心最大級とも言われる日比谷地区の大規模再開発と一体で日比谷公園を再整備する計画です。

 日比谷通りをまたぎ、再開発地区とを結ぶ巨大な2本のデッキ(連絡橋)が建設され、今ある小音楽堂や大噴水が壊され、巨大なイベント広場ができる予定です。完成目標は開園130年に当たる2033年。日比谷野音の名で親しまれる大音楽堂の再整備も計画され、民間事業者に任せる「パークPFI」(関連記事)制度の活用を想定し進んでいます。

 2つのデッキのうち一カ所は、三井不動産やNTT、帝国ホテルなどが2037年度以降の完成を目指して開発を進める「内幸町1丁目街区」とつながります。

 高橋代表はデッキの設置で、公園の外周をぐるりと囲むクスノキなどの樹木が、日比谷通りの街路樹とともに400~500本近く伐採される恐れがあると指摘。「先人たちが考えに考え抜いてつくられた公園なのに、なぜ立体交差となるデッキをつくる必要があるのか。私には分からない」と語りました。

 都が樹木伐採につながりかねないデッキ設置の理由にあげているのは、「まちとのつながりが感じられない」こと。これに対し高橋代表は「樹木が都会との空間を分けることで、静かに過ごすことができる。だから人々は次に向けて鋭気を養うこともできる」と、都会にある公園の役割と樹木の関係を強調しました。

文化財として保存を

 「にれのき広場」では2021年に突然、都によって24本ものニレやケヤキが伐採されたことを紹介。「工事説明では移植とされていたが、一本を除き伐採された。開示請求しても非開示だ。この先、どの施設が壊され、どの樹木が切られるのか分からない。移植すると言われても、誰が診断し、どこに移植するのかも分からない」とのべ、都への不信感をあらわにしました。

 「愛する会」は6月に再整備計画を保留して、日比谷公園を文化財として残すよう求める陳情を都議会に提出。「再整備にはデベロッパーの大きな関与がある一方、住民が計画には全く関与していない」「時の商業主義とは別次元で保存されるべきだ」と訴えています。また、樹木伐採に反対するネット署名には、1万6000人を超す賛同が寄せられています。

 高橋代表はフィールドワークの最後に「ぜひ自分自身の問題として考えてほしい。更なる問題点を明らかにし、情報を共有しながら公園を守っていきたい」と語りました。

東京民報2023年7月16日号より

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