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有料WEB紙面版 2023年8月13日・8月20日合併号
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【1面】
- 【編集長インタビュー*ジャーナリスト 鈴木エイトさん】政治と統一協会 関係断つため徹底検証を 民主主義ゆがめた政界工作(2面に続く)
- 共産党都議団 熱中症から命守れ 都知事あてに申し入れ
- 下町のツミ、営巣10年に 江東区の親水公園
- コラム・一分
【2面】
- 対話と参加、さらに前に 杉並区 岸本区長誕生1周年で集会
- アスベスト 飛散不安に誠意ある対応を 上板橋駅 山添氏ら再開発組合と懇談
- 総選挙 自民党の「幕引き」も争点 鈴木エイトさんに聞く(1面より)
- 目黒区被災者追い出し裁判 裁判費用は気仙沼市が負担 開示請求で新たな疑惑
- 【連載コラム】「砂時計」*ビッグモーターと損保会社
- とうきょうクロスワード 問題
【3面】
- 東京高裁 1200億円余の損害容認 晴海選手村訴訟 住民の請求退ける
- 多摩市 厚生荘病院再開を 労組ら 医療空白なくせと宣伝
- 自民区議「核保有議論すべき」 千代田区 平和使節団参加中に発信
- 【連載コラム】「パワハラのない社会へ②」どうして起きる?
- まちがいさがし「ポカポ家族」/詰碁・詰将棋 問題と解答
- とうきょう人
- 街角情報
【4面】
- 高麗博物館 差別の連鎖断ち切るには 関東大震災100年 朝鮮人虐殺の企画展
- まんが「ポカポ家族」怪談・皿屋敷
- ふるさと便り “ふるさと応援” 特集
【5面】
- 虐殺絵は現代に訴える 新井勝紘前館長が講演
- 料理研究家・時田昌子 暑い夏に疲労回復ごはん!!
- ふるさと便り “ふるさと応援” 特集
【6面】
- 日本は「男尊女卑依存症」内面化した価値観、自覚を ソーシャルワーカー・斉藤 章佳さん
- 【連載】「ふるさとスケッチ」㉑(4)上越の山々シリーズ⑨ 子持山
- みんなの広場
- パシャ
- (漫画)ママはminminギャルママ(358)
◆テキスト版◆
以下に、各面のトップ記事などを一部、テキスト版で公開しています。
1面 政治と統一協会 関係断つため徹底検証を 民主主義ゆがめた政界工作
編集長インタビュー*ジャーナリスト 鈴木エイトさん
安倍晋三元首相が参院選の演説中に銃撃され死去した事件(22年7月)は、統一協会と自民党などの政治家が、長年にわたり深い関係を築いてきた闇を浮かびあがらせました。事件を機に、数々の問題が明るみに出される一方で、自民党は問題の幕引きに躍起です。銃撃から1年で政治と統一協会の闇の解明はどこまで進んだのか。長年、教団の取材を続けてきた、ジャーナリストの鈴木エイトさんに聞きました。
◇
-安倍元首相の銃撃から1年を迎えました。統一協会に関する問題の現状をどう見ていますか。
いわゆる「被害者救済」の問題をめぐっては、不当寄付勧誘防止法が成立し6月に全面施行されました。また、「宗教二世」の問題では、厚労省が児童相談所に向けた対応指針を出すなど、社会への周知が進みました。それぞれ、不十分さはありながらも、一定の前進がありましたが、最も多くの問題が顕在化したにもかかわらず、対策がほとんど進んでいないのが、政治家と統一協会の問題だととらえています。
最も深い関係を築いてきた自民党は、現役の党内の国会議員に向けた、わずか8項目の「点検」をして、今後は関係を持たないというあいまいな区切りで、幕引きしようとしています。50数年にわたる、両者の長年の関係、統一協会や勝共連合による政治家への工作の歴史を、あの程度の形ばかりの「点検」で解明できるはずがありません。
教団の財政に焦り
-そんななかで、現在の統一協会トップ、韓鶴子(ハンハクチャ)総裁が6月に、「日本の政治は滅びるしかない」「岸田を呼びつけて教育を受けさせなさい」などと信者を前に発言していた動画が話題を呼びました。
教団側は「悪質な切り取り」だとしましたが、今回の発言は過去に繰り返されてきたものと、なんの齟齬もなく、統一協会の本来の考え方そのものです。例えば、韓鶴子は2018年にも、当時の安倍首相を指して「打ち負かす」「屈服させる」対象だと発言しています。
ただ、今回の発言が異例なのは、「岸田」と名指しで呼び捨てにしていることです。先ほどの2018年の発言も、「その国の最高指導者」というぼかした言い方でした。教団の解散命令請求の動きなど、日本の現状への焦りが表れているのだと思います。
-焦り、ですか。
いま教団はかなりの財政難に陥っているんですね。分派である文鮮明の三男派との間で、韓国とアメリカで裁判をやっていて、どちらも敗訴し、韓国で700億円の賠償義務が発生しました。
他方で、日本からの送金は、安倍元首相の事件以来、ストップしています。韓国の優良な不動産を売却するなどして、やりくりしている状況です。
教団が深刻な資金難なのに、韓鶴子の意識のなかでは「しもべ」であるはずの日本の政治家が、教団に不利な動きをしている。そうした状況への焦りや憤りが、発言につながったのでしょう。
重要なポイントは、あの場には、日本側の教団幹部も出席し、韓鶴子の発言を受け入れていることです。日本でいくら改革のポーズをとっても、韓国からの上意下達の構造は変わっていないことを表しています。
解散命令の現状は
-そのこととも関わって、国による解散命令請求の現状をどう見ていますか。
私が、文化庁やその周辺を取材している限りでは、そう遠くない時期に解散命令請求は出されるととらえています。
かなり慎重に、多角的に、解散命令請求の要件となる組織性、悪質性、継続性を立証する材料を集めているのが現状です。ただ、今後、教団との関係を断ち切れない政治家側からの横やりの動きが起きないかは、注視が必要です。
また、宗教法人法には財産保全の条文がないので、解散命令が確定するまでの間に、教団が資産を海外に移すことが予想されます。被害者への賠償のための資金を海外に移させないために、解散命令請求の手続きと同時並行で、財産保全のための法整備も必要でしょう。
-鈴木さんの著書「自民党の統一教会汚染」(小学館)を読むと、統一協会が政治家に運動員となる信者をあっせんするパーティーを開いていたり、両者の関係の深さに、改めて驚かされます。
政治家の多くは、こういう団体とは本当は付き合いたくないという気持ちはあるのだと思います。ただ、落下傘候補など地盤がない政治家にとっては、運動員を送り込み、後援会まで作って、丸抱えで選挙を応援してくれる団体はありがたくて、重宝してきた。外聞は悪いから、表向きは付き合いを隠しつつ、ギブアンドテイクの関係を築いてきたのが実態でしょう。
教団側にとっては、文鮮明が「みことば」で、議員の秘書となり、相手の弱みを握り、最終的には自分自身が立候補するように指示しています。組織的に秘書を送り込み、意図的に政治の側に入り込んできた数十年間でした。
教団が系統的に政界工作をしてきたことで、民主主義の根幹である選挙がゆがめられてきました。また、諸外国では当たり前のように進んでいる、LGBTや選択的夫婦別姓などの法整備が、日本では進んでこなかったことをはじめ、政策にも影響を与えてきました。
安倍ルートに空白
-著書で、とてもスリリングだったのが、安倍元首相と教団との関係を、綿密に調査し、証拠を積み上げていく過程です。
安倍元首相と統一協会との関係は、いくつかの空白があって、そこを埋めていく作業が今後、必要です。
2000年代の中頃に、安倍氏は、自民党の候補者から相談を受けた際に、統一協会について「あそこはダメだ。父と祖父は仲良くしたが、じぶんは嫌いだ」という発言をしていたことが分かっています。教団の内部資料には、すでに安倍氏の名前が出ていた時期です。
他方で、2013年の参院選では、安倍氏が教団側に組織票を依頼していたことが、裏付けられています。この数年間に、何があったのか。民間ルートや政界ルート、さまざまな人たちがかかわり、安倍氏への働きかけが行われたと想像できます。
いま、自民党は、安倍さん一人に責任を負わせて、この問題を終わらせようとしている節もあります。“統一協会は安倍さん案件だった”という形で、終わらせようとしているのだとしたら、「政治家として、恥ずかしくないのか」と思います。どのように、自民党や安倍氏が、統一協会と関係を深めてきたのか、きちんとした解明こそ、やるべきことです。(2面に続く)
2面 対話と参加、さらに前に 杉並区 岸本区長誕生1周年で集会
杉並区の岸本聡子区長が誕生して7月で1周年を迎えたのを機に、岸本氏の後援会「ソシアル サトコズ」は7月30日、成果や課題を共有する集会「杉並区は止まらない みんなで前へ!」を区内で開きました。オンラインも含め、500人以上が参加しました。
岸本氏は、スライドも使って、▽オープンで透明性の高い区政▽住民参加の仕組みづくり▽区民の暮らしや命と健康を守る施策の拡充▽子育て支援▽人権と多様性、働く人の権利を守る-など、この1年、重視して取り組んできた課題を紹介。
区民との対話集会「聴っくオフ・ミーティング」の年10回開催や、まちづくりの中で道路問題を考える対話集会「さとことブレスト」の実施など、住民参画の仕組みづくりを進めてきた成果について、「区民から聞いた話が区役所の議論のベースになっている。幹部職員が区民の生の声を聞いて課題を受け止めている」と手応えを強調しました。
今後も「対話と参加のまちづくり」に力を入れていくとし、道路拡幅など前区政が決めた計画に関連して、「決まったことだからと進めるのではなく、住民も職員も当該地域に住んでいない人も参加するデザイン会議へと発展させたい」と、意欲を語りました
岸本氏はまた、1年の成果として▽記者会見へのフリーランスの参加とライブ配信▽区長専用車の廃止▽中小企業へ光熱費値上げ分の支援▽高齢者の補聴器購入費助成▽妊産婦検診を1回から4回に拡充▽公立小中学校の給食費無償化(9月議会に提案)▽生活保護の扶養照会を希望者のみに▽子どもの権利条例制定に向けた審議会設置▽パートナーシップ制度などを規定した性の多様性条例―などを挙げました。
4月の区議選で投票率を上げようと、一人で街宣に立ってアピールしたことを紹介。投票率は区全体で前回より4.19ポイント、中でも30代女性は9ポイントもアップしたことを紹介。会場から拍手が湧きました。
さらに今後の政策課題として、参加型予算のモデル実施や無作為で選ばれた区民による「気候区民会議(仮称)」の年度内実施、家賃助成制度の来年度実施に向けた検討などをあげました。
「やったね杉並区」 区民が変化を討論
岸本区政の1年を区民と振り返るパネルディスカッションが行われました。
登壇した4人の区民は「区はカウンター越しに相対する関係から、一緒に議論を交わす関係に変わった。区長と職員もチームとして動き出していると感じる」「当事者にとって(性の多様性)条例ができた意味は大きい。自分が生き誰かを大切にしていることを肯定されるようになった。やったね杉並区という感じです」など、実感する区政の変化について喜びとともに語りました。
後援会の内田聖子事務局長は「一人ひとりが、自治と民主主義を地域で進める主役になろう」と呼びかけました。昨年6月の区長選で岸本氏を支援した日本共産党、生活者ネットの区議と立憲民主党の吉田はるみ衆院議員が登壇し、紹介されました。
集会ではまた、スペインのバルセロナ市が2020年に発表した気候危機への政策集を後援会が翻訳した冊子『これは訓練ではない-気候緊急事態宣言』を公表しました。
3面 東京高裁 1200億円余の損害容認
晴海選手村訴訟 住民の請求退ける
東京駅から直線で約3.5キロメートルと至近距離の中央区晴海5丁目の都有地(13.4ヘクタール)に林立するマンション「晴海フラッグ」。小池百合子知事がこの都有地を近隣地価の10分の1以下で不動産会社11社と売買契約を結んだことに「都政版森友事件だ」と批判があがり、都民が提訴した住民訴訟の控訴審判決が3日、東京高裁でありました。
2021年東京五輪大会の選手村として整備し、大会後は改装して24年1月から入居を開始、建築中の超高層マンション2棟は25年に完成予定です。
東京都を相手取って提訴しているのは「晴海選手村土地投げ売りを正す会」の中野幸則氏ら都民29人。都に大損害を生じさせたとして、17年に小池知事、舛添要一元知事、不動産会社らに1209億円余の損賠賠償を請求するよう都に求め東京地裁に提訴。地裁が21年、都有地投げ売りを追認し請求を棄却したため、東京高裁に控訴していました。
東京高裁の三角比呂裁判長は3日の判決で、東京地裁判決を支持し、原告の損害賠償請求を棄却。原告側は判決を厳しく批判、最高裁に上告することを決めました。
判決後の会見で、中野原告団長は「不当判決だ。『オリンピック要因』を理由に正式な不動産鑑定すら行われず、不当な土地価格評価がなされ、都民の財産が著しく毀損(きそん)された」と批判しました
裁判で原告は、①都が土地譲渡契約を結ぶ際に、地方自治法で定める議会の議決を経ず、不動産鑑定評価書も作成せず、財産価格審議会にも諮らずに契約したことは明らかに違法②都が晴海都有地の市街地再開発事業で再開発の保留床に関する規定である都市再開発法108条2項を適用し、土地処分をしたことは同法の誤用違反だ③都の譲渡価格は、埋め立て造成コストすら回収していない④土地価格決定と入札経過に都と事業者側の官製談合がある-と主張しました。
一方、都側弁護人は”報道関係者を含む傍聴人に非常に大きな誤解が生じる””名誉棄損だ”などと原告を非難。土地価格値引きの釈明では「選手村要因」があると逃げ、鑑定評価基準に則って正常価格を算出する必要はない-と開き直りました。
三角裁判長は昨年12月、原告が提出した田原拓治・不動産鑑定士(桐蔭横浜大学客員教授)の「明白な地価公示法違反の鑑定評価」だとする意見書を証拠採用したにもかかわらず、同氏証人尋問申請を却下し、弁論再開申し立ても認めませんでした。
裁判を傍聴した田原氏は「控訴審判決は法律解釈を間違えた。裁判所は五輪要因の土地価格がいくらになるのかを示しておらず、判決ミスだ。ぜひ上告してほしい」と原告を激励しました。
解説 官製談合疑惑にメスを
住民訴訟で浮上したのが、都有地売却をめぐる都と大手不動産会社による官製談合疑惑です。
都は土地売却をする前に、事業協力者「晴海スマートシティグループ」(都有地購入11社を含む13社)と協議し、売却予定価格を決定。
その後都が行った都有地売却公募に、晴海フラッグ1グループだけが入札、都が示した最低価格で契約しました。
昨年11月、原告団は選手村用地の特定建築者募集決定に先行して、舛添前知事、安井順一・元都市整備局長と事業協力者が入札談合に関与したとして、公正取引委員会に対し、官製談合防止法(入札談合等関与行為防止法)に基づき改善措置を講じるよう申告しています。
都有地値引きに関与した不動産会社のうち9社とコンサルタント会社に都元局長ら22人が天下りしていた事実も、筆者の取材(20年3月時点)で判明。その後も天下りは続いています。
中央区は晴海フラッグの入居者のために、晴海5丁目などに学校など公共施設の整備をすすめています。同区が都から購入した都有地の土地単価は晴海フラッグの5倍。都の”デベロッパーファースト”は明白です。(岡部裕三)
4面 高麗博物館 差別の連鎖断ち切るには 関東大震災100年
関東大震災(ことば)から9月で100年。震災発生直後から「朝鮮人が、暴動を起こした」「井戸に毒を入れた」などのデマが流され、朝鮮人・中国人や労働活動家などが軍隊や警察・民間人の自警団によって虐殺されました。新宿区の高麗博物館では7月から12月まで、企画展「関東大震災100年 隠蔽された朝鮮人虐殺」が開催されています。高麗博物館を吉良よし子日本共産党参議院議員、坂井和歌子同党比例東京予定候補と訪ねました。
朝鮮人虐殺の企画展
企画展は韓国の植民地歴史博物館の協力も得て、韓国中国両国による真相究明にもスポットを当てます。期間中は関連企画も多数予定されています。
虐殺伝える絵巻物
館に入ってすぐ目に入るのが、ガラスショーケースに飾られた今回の企画展で初めて公開された「関東大震災絵巻」。震災の2年半後に描かれたもので、2巻合わせて30メートルを超えるものです。
肩から血を流し倒れている人や、必死に逃れようとしている人物にこん棒や刀を持って襲い掛かる軍人や警察の表情まで読み取ることができます。
吉良議員は「こんな超大作が、100年経ったとは思えない綺麗な状態でよく残っていましたね」とじっくり見入りました。
官民一体の虐殺
企画展では、虐殺の過程も詳細に説明しています。震災当日の9月1日には、自警団による虐殺が始まりました。2日には警官たちが「朝鮮人が井戸に毒を入れた、放火した」などと流言を言いふらし、夕方には戒厳令が敷かれます。3日には国家の治安組織中枢である内務省も「朝鮮人の取り締まり」を命じます。新聞各紙もデマを積極的に報道しました。流言は東京から関東全域に広がり、各地の民間人で組織された自警団が家庭から日本刀やとび口、竹やりなどを手に虐殺に加わっていきました。
保護を理由に朝鮮人を移送する途中で軍が射殺、移送後の朝鮮人を地域住民に引き渡して殺させたなどの目撃証言が数多くあります。
内務省は朝鮮人暴動の事実がつかめず事態の収拾に努めますが、扇動的なデマが優勢となり、9月の上旬まで虐殺は続きました。
戒厳令が発令された背景には、1910年の韓国併合以前から続く植民地支配に対抗する民衆を、日本は「不逞鮮人」として弾圧の対象としてきた歴史があります。虐殺は、朝鮮人暴動を恐れた官僚・軍人の恐怖心と日本人の朝鮮人差別意識の延長に起きたのです。
坂井氏は「差別を助長した政治の責任は極めて重く、現在の社会・教育において、もっと大きく扱われるべき問題だ」と感想を語りました。
実態解明なく百年
当時上海にあった大韓民国臨時政府機関紙『独立新聞』の調査では、犠牲者は6661人と数えられていますが、日本政府の司法省は233人と発表しています。
司法省が立件したのは民間人による虐殺のみで、軍隊や警察については1人も処罰されませんでした。政府は、事件の調査、発覚を恐れて、死体を掘り起こして持ち帰るなど、証拠隠滅を図りました。
中国人犠牲者は帰国した留学生によって詳細な調査が行われ、750人超の死傷者が判明しました。遺族の謝罪要求に、日本政府は誠実な対応をしていません。
植民地下にあった朝鮮人は、名前も殺された場所も人数すらも明らかになっていません。
こうして犠牲者の実態も政府の責任も明らかにされないまま100年が経とうとしています。
一方で、市民の手で犠牲者を追悼し歴史を継承する動きが各地で起きています。
しかし、「虐殺はなかった」と歴史を否定する声が排外主義とともに大きくなっています。教科書の記述削除、ヘイトスピーチの頻発、そして墨田区の都立横網町公園で毎年開催されている追悼式典への、小池知事の追悼文送付取りやめです。自民党都議による虐殺を否定する都議会質問がきっかけでした。追悼文送付をやめた年から、追悼式典を妨害する集会が、同時間・同敷地内で開かれるようになりました。
さらに高麗博物館の今年のイベント(5面に詳報)は、新宿区の後援が認められませんでした。区は「区の施策の方向性と異なる」と回答。博物館は今後話し合いを続けていく予定です。
小池知事の態度が職員に虐殺の否定を内面化させ、トップダウンの差別主義の危機が広まったことで、こういった事例が続いていると同館は警鐘を鳴らします。
「あったことを否定するのは2度目の虐殺になる」というスタッフの熊谷陽子さんの説明に、吉良氏は大きくうなずきながら、「100年前で止まったままの負の感情、差別の連鎖を断ち切ることが求められている。差別は表現の自由などではなく、人の命を奪うこともある」と、罰則つきの差別禁止法の必要性を語りました。
5面 虐殺絵は現代に訴える 新井勝紘前館長が講演
今回の企画展で初公開された歴史絵巻に描かれた当時の様子やメッセージを読み解き、未来の共生社会を考えるイベント「関東大震災から100年の今を問う」が7月31日開催されました。
前高麗博物館館長の新井勝絋さんが、これまで出会ってきた「虐殺絵」について講演しました。
虐殺を描いた絵は、政府が事件の隠蔽をはかったことから、世に出ているものが少ないことに加え、存在すらも明らかになっていません。新井さんが虐殺絵に出会ったのも過去に4回だけです。
子どもたちが描く
初めて出会ったのは、本所区(現在の墨田区)の本横小学校の児童が描いたもの。東京都復興記念館に所蔵されています。
当時4年生の児童が描いた絵には、自警団らしき人々が道行く人に尋問をする様子が描かれています。自警団は朝鮮人を見分けるために、朝鮮語で発音しづらい「15円50銭」と言わせる、歴代天皇の名を唱えさせるなどしました。同じく4年生の児童は、千葉県の中山(市川市)で、複数の軍人が一人の朝鮮人に武器を持って襲い掛かる様子を描きました。新井氏は「おそらくこの先の運命も目にしたのではないか」と推測します。
子どもたちが見聞きした事件の様子は作文などにも残され、虐殺が場所を選ばず日常の中で行われたことがわかります。
歴史に埋められ
二つ目は1995年に国立歴史民俗博物館が購入した水彩画。顔から血が噴き出る人に、なお男たちが殴り掛かる、その周辺にはすでに息を引き取った後ろ手に縛られた4人の遺体、新たに連行されてきた人など、さらに川べりでの虐殺に参加せんばかりに取り巻く群衆…。軍人、警察、自警団、民衆が一体となって白昼に虐殺が行われたことを示す強烈な絵です。
表題・作者・日付など一切の情報がなかったものの、挿絵画家の河目悌二の作品であることを突き止めました。震災を東京で経験した河目は、この記憶を記録することを決意したのでしょう。しかし、「没後この絵を公開しないように」と言い残して1958年に亡くなりました。
1996年に発見された萱原白洞の3巻の絵巻物「東都大震災眼録」にも、警察と自警団が一緒に事件を引き起こした様子が描かれています。
事件を隠ぺいした、軍国主義の時代が両氏の絵を埋もれさせていたと新井氏は語りました。
偶然の発見
高麗博物館にも展示されているのが、新井氏が2年前にネットオークションで偶然落札した、淇谷の「関東大震災絵巻」です。淇谷は雅号で福島県の小学校教師を務めた大原彌市のことで、絵巻物を書いた1926年は64歳でした。
絵巻は地震発生直前の穏やかな東京の街の描写から始まり、震災の被害を伝え、やがて虐殺の現場、犠牲者がモノのように積み重ねられた様子を描きます。巻末には、この経験をしなかった人々に「省慮の念を促し」たいと記されています。震災を経験しなかった大原が見聞きしたことをもとに、描くのもつらい虐殺を残した理由です。
差別克服するには
新井さんは、「虐殺を引き起こした官民の差別意識を克服できているか。まだ歴史にすらなっていないのでは」と問いかけました。
「朝鮮人大虐殺はなかったなんてとんでもない」と言うかのように、虐殺の証拠を示す絵が見つかっています。新井さんは、「一枚一枚の絵の訴える力をどう使うべきか」と否定論に立ち向かっていこうと訴えました。
河目悌二、淇谷の虐殺絵は、高麗博物館で展示されています。
関東大震災
1923年9月1日午前11時58分に発生した最大震度7、マグニチュード7.9の大地震。東京・横浜を中心に死者・行方不明者は推定10万5000人(うち9万2000人が直後に発生した火災で死亡)、被災した住居は総計37万棟と、明治以降の日本の地震被害としては最大規模。
6面 日本は「男尊女卑依存症」内面化した価値観、自覚を
ソーシャルワーカー・斉藤 章佳さん
アルコール依存症を始め痴漢や盗撮、DVなど統計的に男性が多いとされる依存症問題で、多くの当事者の治療にかかわってきたソーシャルワーカーの斉藤章佳さん。これまでも『男が痴漢になる理由』『盗撮をやめられない男たち』などの著書が話題になってきました。さらに今年6月、満を持して『男尊女卑依存症社会』を出版。新刊への思いを聞きました。
-「男尊女卑」という大きなテーマで本を出されたのはなぜでしょう。
斉藤 性暴力やDV の問題に長年関わってきて加害者の大半が男性で、その背景にある価値観として、女性を物化するという共通の現実の捉え方があることに気づきました。形容する言葉が色々ありますが、一番しっくりくるのは女性蔑視を背景とした「男尊女卑」という言葉でした。最近では、ジェンダーギャップという言葉が使われますがそれは生ぬるいように感じます。
やはり”男尊女卑”が一番彼らの行動原理を支えている価値観としてしっくりきます。性犯罪は、性を使った暴力であり背景にこの価値観が存在しています。
2017年出版の『男が痴漢になる理由』の頃から、男尊女卑という言葉を意識的に使ってきました。ただ彼らも生まれた時から、こういう価値観を持っていたわけではなく、日本社会の中で学習し、内面化していったのでしょう。
私は「男だから、長男だから、跡取りだから」と言われて育ち、子ども時代には生まれた時点で人間の価値が決まるとどこかで思っていたのです。当院の理事長に「この言葉に拘るのは君の中に男尊女卑の価値観が根強く残っているからじゃないか」と指摘され自覚するようになりました。
このテーマにした本当の理由は私を支えている根っこにある価値観が男尊女卑であるという気づきがあったからです。だからこそ男性に読んで欲しいと思います。
-具体的な体験は。
斉藤 DVや性暴力の加害男性の話を聞いていると、認知がすごく歪んでいます。「被害者にも非があった」や、「相手が望んでいた」と真顔で主張します。「自分は逆に被害者で、被害に遭った相手の方が悪い」と言い、被害者に責任を転嫁します。これを加害者臨床の中では”被害者の自責と加害者の他責”という言葉で表します。
加害者更生プログラムは必ず男女のペアで進行役を行いますが、スタッフ同士のコミュニケーションから相手を尊重する対等な関係性ってどういうことなのかを直に見て学んでもらいます。
その中で男性スタッフが話す時と女性スタッフが話す時で彼らの態度が明らかに変わることがあります。言葉で攻撃するわけじゃなく、態度で「男尊女卑」を表現します。私が話す時はメモを取って首がもげるぐらいうなずいているのですが、女性のスタッフになると舌打ちしたり、首をかしげたり腕や足を組んで何か一瞥するような、顔も明らかに不機嫌さを出すのは共通しています。
男性が話す時と女性が話す時で、脳の中にある男尊女卑のスイッチが自動的に切り替わる。これは性暴力やDVの加害者だけではなくて、日本のあらゆるところで見られる光景です。
-根深い問題です。
斉藤 我々が生きている日本社会で前提となっている価値観が大きく影響していて、多くの人の生きづらさにも根強く影響しています。私たちは男尊女卑的な価値観を、家庭、学校、メディア、社会の4つから毎日シャワーのように浴びていて、無意識のうちに学習し内面化していきます。男性の中には、この価値観の中で生きることが呼吸をするほど当たり前になっており、わざわざ反応しない人もいます。
一方で女性は日々その価値観に虐げられ痛みを感じているので敏感に反応するのでしょう。男性と女性では見ている世界が違います。DVは典型で、片方は萎縮して「はいはい」と相手を逆なでしないように迎合的にふるまうよう努力しているのに、片方は自分に賛同していると思い込んでいます。
男性も生きにくい
-「男らしさ」問題の弊害はどうでしょうか。
斉藤 世の男性全てが勝ち続けることはできません。長時間労働をいとわず自己犠牲的に働き続けて過労死をしてしまうとか、うつ病になり自殺する人は多くいます。
日本の自殺者数は世界1位で圧倒的に男性が多いです。それは「男は弱音を吐くな」と言われ続け、助けを求めるのは弱い人間のすることで男らしくないとされている。やっぱり幼い頃からの、有害な男らしさの刷り込みは大きくて、本当に最後の最後まで誰にも助けを求められずにいる人は少なくないです。
そんなことで自ら命をたってしまうなら、さっさと「男らしさ」のパワーゲームから降りた方が楽ですよね。少なくとも家族は自殺なんて望んでいない。どんな状況であっても生きててくれればいいと思いますからね。
-この日本の男尊女卑依存症に処方箋は。
斉藤 この国は男尊女卑依存症社会だとまず認める必要があります。認めたがらないですよね。この前G7の男女共同参画の会議ではホスト国の日本が真ん中で男性。他の外国来賓は全員女性で、本当に風刺画みたいでした。これが当たり前すぎて…。
日本のジェンダーギャップ指数では政治・経済分野が最低ランクなのに、それを意識することもないから、全く引っかからないのでしょうね。
暗たんたる気分になりがちですが、2023年の性犯罪刑法改正は大きく変わりました。2017年の110年ぶりの改正に引き続き、今回の改正では不同意性交等罪に名称が変わりました。「同意」という言葉が入るなど画期的です。2019年に性犯罪無罪判決が4件出て、「これはもう黙っていられない」と、全国各地でフラワーデモが起きて世論が形成され、その4件中3件が高裁で覆りました。そこからの連続した動きの中で今回の大きな改正があり、さらに5年後にまた見直すとなりました。
だから”変わる”と思います。自分たち世代から変わっていけば、少しずつ男尊女卑の濃度が薄まってくるのではないでしょうか。












