【コラム砂時計】猛暑にも「左うちわ」?〈7月10日号より〉

 

 空梅雨から一気に猛暑になったこの夏、8月から電気料金の値上げが待っている。平均的な家庭の料金が東京電力で月額9118円、1年前に比べ2100円(約3割)もアップする。この背景にはロシアのウクライナ侵攻で発電に使う天然ガスの価格が高騰したことがある。石油製品を使用している中小の業者が円安による原材料高を価格に転嫁することができずに、頭を抱えているとき、右から左へ消費者に「つけ回す」ことが許される構造にも問題がある。

 他方、予想される電力不足に備えた節電と並行して、熱中症の危険を避けるため「適切なエアコン使用」を呼びかけるなど、政府の対応は矛盾だらけである。

 ところで、いま注目されているのがトヨタ、パナソニック、東芝、日産、ソニー、任天堂、ホンダなどの大企業である。会社が営業計画を立てる際、為替レートがいくらになるかを計算して利益予想する。調べた結果、ここに挙げた企業は1ドル=115円で計算している。

 かつて2010年夏、円高で1ドル=90円を割り込んだことがあった。当時、トヨタは1ドル=84円の水準が続けば、1800億円の営業利益が消える、として海外での生産拡大を進めた。

 それがいま、1ドル=135円(4日現在)である。1ドル=115円で計算している企業は、為替差益だけで20円の儲けが転がり込む。トヨタはたった1円の円安で400億円の増益になるとされ、20円なら為替差益分で8000億円!

 庶民の台所事情にまったく疎い(?)日銀の黒田東彦総裁が続ける金融緩和策は、当初予想をはるかに上回る収益を自動車などの輸出産業にもたらしている。猛暑に人々があえぐ中、「左うちわ」というわけだ。内部留保に課税をという提唱に、「二重課税だからできない」などと言っている場合ではない。

(ジャーナリスト・阿部芳郎)

(東京民報2022年7月10日号より)

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