安全運行めざしつどう 路線バスの運転士有志〈2023年8月6日号〉

「当たり前の労働者の権利に理解・共感も示さない判決」と語る尾林弁護士=7月27日

 東京都内を中心に首都圏で主に路線バスの運行に携わるバスの運転士の有志らが7月27日、安全運行のための情報交換と学習の集まりを開きました。

 尾林芳匡弁護士が参加し、京王グループの西東京バス事件について講演。原告の安田崇弘さんも参加し、5月24日の東京地裁立川支部の判決を不服とした控訴について語りました。

 この事件は西東京バスが2011年に子会社として多摩バスを設立して不採算路線を移管し、新規採用した運転士を西東京バスより年間100万円も低い低賃金・低処遇で就労させてきたことをめぐるもの。2011年に多摩バスを吸収合併し一つの会社としましたが、多摩バス出身の運転士についての給与格差を是正することなく現在に至っています。その際、労働者の批判を抑えるためにルール変更までして、労働組合役員から安田さんを排除するなどの対応も行ってきました。

 その後、安田さんら原告は「同一賃金同一労働に反する」ことと併せて、休憩中に現金を使用したことの懲戒処分の取り消しなどを求めて東京地裁立川支部に提訴。しかし、地裁は原告の訴えを退けました。

同一賃金同一労働 裁判所が背を向け

 尾林弁護士は地裁判決について▽同一の業務の合併で、大きな賃金格差の存続は労働法の平等取り扱い義務原則に反する▽多摩バス出身者への労働基準法3条(差別的取り扱いの禁止)違反-など、合併から10年を経ても統一の努力をしていないことが考慮されていないと批判。併せて1日16時間拘束で4時間の社食もない場所での休憩時間に、コンビニでおにぎりを現金購入したために受けた懲戒処分を妥当とした判決に対し、「食券やICカードなどのサービスしか利用できないというのは休憩時間の自由利用を阻害している不当判決だ」と強調しました。

 安田さんは「おかしいとの声が出せない萎縮した職場と化している。勤続30年で家1軒分の賃金差別は、結婚や子育てをあきらめなくてはいけない格差を招いている。この差は仕事への意識の低下も招きかねない。粘り強くたたかい、自分で行動して社会は変えていけると伝えたい」と控訴審への意気込みを語りました。

 このほか、運輸業の働き方改革などへの問題意識の共有や対応、安全運行への取り組みについて交流しました。

東京民報2023年8月6日号より

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