【アーカイブ連載】妊娠葛藤相談の現場から④自己決定をはばむ構造〈2021年4月4日号より〉

 「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)」をご存知でしょうか。1994年にカイロで開かれた国際人口開発会議で提唱された概念で、「性と生殖に関する健康と権利」と訳されています。セクシュアリティと生殖のあらゆる側面で、身体的、精神的、社会的な幸福が実現できている状態を指し、また、自分の身体に関することを自分で決められる、そのために必要な情報と手段を得られる権利を意味しています。

 しかし「にんしんSOS東京」に寄せられる相談者の声に触れる度に、「自分の身体に起こっていることを自己決定できない」日本社会の現実を思い知らされています。

 公教育における包括的な性教育の不足、選択肢が限定的な上に高額な避妊方法、中絶における同意書や、妊娠・出産費用の自己負担の問題など、自己決定を阻害し、「妊娠葛藤」を強めている障壁の多くは、ジェンダーの視点が欠落した社会制度に起因したものです。これら障壁が取り除かれることなく再生産され続ける中で、「思いがけない妊娠」に対する社会の冷たい視線が強固に内在化されていく―ピッコラーレの活動に携わる中で、その構造の有り様が明確に見えてきました。

 そして、このゆがんだ社会構造によって最も強い負の影響を受けているのは、10代を中心とした若年層であることに、そろそろ社会全体が気づかなければなりません。これら構造は、本来であれば、社会に守られるべき立場にある若年に対してより強い懲罰を課す仕組みとなって作用し、彼らを絶望するほどの孤立へと追い詰めています。

 ピッコラーレは先日、「妊娠葛藤白書~にんしんSOS東京の現場から2015~2019」(https://piccolare.shop/)を発行しました。現場の相談支援員が約1年半の歳月をかけて、15年の開設から19年まで「にんしんSOS東京」に寄せられた2919人の声一つ一つと向き合い、個人が特定されないようデータを加工・整理・分析し、まとめました。

 本書を通して、「妊娠葛藤」を生み出す社会的要因―SRHRが大きく侵害された日本の現状や、妊娠をするそのずっと前から、いくつもの困難を抱えながら生きてきた10代・20代の若年の背景にある、貧困、虐待、暴力といった社会的課題など―を改めてご理解いただき、ピッコラーレのビジョンである『「にんしん」をきっかけに、誰もが孤立することなく、自由に幸せに生きていける社会の実現』を目指して、ともにソーシャルアクションを起こす一員になっていただけると幸いです。(終わり=特定非営利活動法人ピッコラーレ 事務局長 小野晴香)

(東京民報2021年4月4日号より)

関連記事

最近の記事

  1. 介護保険料 全国平均過去最高に  厚生労働省は2024~26年度の65歳以上の介護保険料(月…
  2. 1面2面3面4面 【1面】 PFAS汚染 検査通じ「正しく恐れて」 東京民医連病体生理…
  3.  能登半島地震の発生から4カ月余りが過ぎました▼被災地には、震災直後のままのような光景も残ります。…
  4. 多くの市民が見守るなか行われた除幕式= 7 日、府中市
     世界で武力紛争が相次ぎ、憲法改悪の動きが緊迫する中、全国で37カ所目、都内2カ所目となる…
  5. 未来塾で語り合う吉良、山添両氏と参加者=11日、都内  日本共産党の吉良よし子、山添拓両参院…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

#東京民報 12月10日号4面は「東京で楽しむ星の話」。今年の #ふたご座流星群 は、8年に一度の好条件といいます。
#横田基地 に所属する特殊作戦機CV22オスプレイが11月29日午後、鹿児島県の屋久島沖で墜落しました。#オスプレイ が死亡を伴う事故を起こしたのは、日本国内では初めて。住民団体からは「私たちの頭上を飛ぶなど、とんでもない」との声が上がっています。
老舗パチンコメーカーの株式会社西陣が、従業員が救済を申し立てた東京都労働委員会(#都労委)の審問期日の12月20日に依願退職に応じない者を解雇するとの通知を送付しました。労働組合は「寒空の中、放り出すのか」として不当解雇撤回の救済を申し立てました。
「汚染が #横田基地 から流出したことは明らかだ」―都議会公営企業会計決算委で、#斉藤まりこ 都議(#日本共産党)は、都の研究所の過去の調査などをもとに、横田基地が #PFAS の主要な汚染源だと明らかにし、都に立ち入り調査を求めました。【12月3日号掲載】
東京都教育委員会が #立川高校 の夜間定時制の生徒募集を2025年度に停止する方針を打ち出したことを受けて、「#立川高校定時制の廃校に反対する会」「立川高等学校芙蓉会」(定時制同窓会)などは11月24日、JR立川駅前(立川市)で、方針撤回を求める宣伝を21人が参加して行いました。
「(知事選を前に)税金を原資に、町会・自治会を使って知事の宣伝をしているのは明らかだ」―13日の決算特別委員会で、#日本共産党 の #原田あきら 都議は、#小池百合子 知事の顔写真と名前、メッセージを掲載した都の防災啓発チラシについて追及しました。
ページ上部へ戻る