発がん性物質PFAS「都は汚染源特定し対策を」多摩地域 都調査で21自治体検出〈2022年12月25日号〉

 発がん性など健康への悪影響が指摘される有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)が、多摩地域で水道水に使われる井戸水から広範に見つかっている問題をめぐり、東京都水道局による調査で、何らかの濃度でPFASが検出された浄水所は、多摩地域の30市町村のうち21自治体40浄水所に広がっていることが分かりました(地図)。都や国に、PFASの汚染源を特定して対策を取るよう求める声が広がっています。

 都内23区では水道に河川からの水を多く使っているのに対し、多摩地域の水道では井戸水が広く使われてきました。

 水道局ホームページでは、2004年から現在までの各浄水所の井戸の原水、浄水、給水栓水(蛇口)について、PFASの一種であるPFOA(ピーフォア)とPFOS(ピーフォス)の測定結果を公開しています。

 検査をしていたものの、都民に公開していなかったデータで、報道でPFAS汚染に注目が高まり、情報公開を求める動きがあったことなどを受けて、2021年に全面公開したものです。

 東京民報は、各浄水所で2004年から21年までの間に、PFOSとPFOAの合計で最も高く検出された値を集計(表)し、地図にまとめました。多摩地域全体に汚染が広がり、特に東中部地域に高濃度の汚染が見つかっていることがわかります。

 1リットルあたり100ナノグラムを超える汚染が見つかっているのは、府中、調布、小金井、小平、国分寺、国立の6自治体です。さらに、40~99ナノグラムの汚染が見つかっているのは立川、日野、西東京、狛江、東久留米と5自治体あります。

 都水道局は、高い濃度でPFASが検出された一部の井戸は、取水を停止。他の井戸については、濃度が高くなった場合は対策を取るなどして、給水栓(蛇口)における濃度は、国が2020年4月に定めた暫定目標値(PFOSとPFOAの合計で1リットルあたり50ナノグラム以下)を下回るよう管理していると説明しています。

 その一方、PFAS対策が進むアメリカでは、抜本的に飲料水の基準を厳しくする動きが出ています。アメリカの環境保護庁(EPA)は、従来の1リットルあたりPFOSとPFOAの合計で70ナノグラム以下としていた基準を、1リットルあたりPFOSを0.02ナノグラム以下、PFOAを0.004ナノグラム以下に厳しくするとしています。

横田基地も泡消火剤で

 EPAは、「PFASの人間の健康と環境へのリスクの現在の理解」という文書で、人体への影響について、前立腺がんや腎臓がんなど一部のがんのリスクが高まることや、妊婦の生殖への影響、低出生体重などの可能性を指摘しています。

 PFASは、自然界でほとんど分解されず「永遠の化学物質」とも呼ばれます。撥水加工などで多くの製品に使われたほか、航空事故の際の泡消火剤にも使われたため、化学工場や米軍基地の周辺などで深刻な汚染が見つかっています。

 多摩地域のうち武蔵野市、昭島市、羽村市、檜原村の4自治体は、独自の水道事業を行っています。また、個人が所有する井戸もあり、さらに多くの自治体に汚染がある可能性があります。

 東中部地域に深刻な汚染が見つかっている理由について、市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」共同代表の根木山幸夫さんは、「東京の地下水の流れには、未解明の部分が多く、確定的なことは言えない」としたうえで、昭島市など一部の自治体が行っている地下水の流れの調査で、地下水が西から東に流れる傾向がわかっていることを指摘します。

血液検査について会見する根木山さん(右から2人目)=11月23日、立川市

 横田基地(福生、武蔵村山、羽村、立川、昭島、瑞穂の5市1町)では、泡消火剤が消火訓練などで定期的に使われていたほか、多摩地域には化学工場も立地しています。これらが汚染源となり、地下水の流れにのって広がった可能性があります。

 根木山さんは「井戸水は、多摩地域の住民の生活や産業を支えています。こんなに広範に深刻な汚染が見つかっているのに、東京都は汚染源を特定せず、放置していていいのか」と強調します。

 根木山さんら「明らかにする会」は、多摩地域で11月から、自主的な血液検査に取り組んでいます。住民の血液にどれくらいのPFASが蓄積しているのかを明らかにすることで、都や国による大規模検査と対策につなげようというものです。すでに9会場11回の血液採取が決まっており、広く参加を募っています。申し込みや詳細は会のホームページで

東京民報2022年12月25日号より

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